三芳町への提案・続編 / 町民とAI
役場の仕事を、少しずつ変える。
電話番号の一桁から考える、共通台帳と日常のAI活用。
町からの回答を受け、実行への道筋をもう一歩具体的に。
三芳町の職員の皆さんが、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を日々の庁内業務で使い、確認や調整の負担を減らしながら、町民により確かな情報を届けられるようになってほしい。その願いから、町への提案を重ねて書くことにしました。
前の記事「一桁の違いをAIが見つけた ── 三芳町のWebページを『点検できる町』へ」では、町ホームページの電話番号の食い違いを取り上げました。9月28日には訂正を確認し、環境課への感謝を追記しています。[1]
そして9月30日、9月26日付の問い合わせについて、秘書広報室から回答をいただきました。共通の事業者台帳の有益性を認めてくださったこと、掲載時の確認を徹底する方針を示してくださったことを、まず受け止めたいと思います。[2]
回答を読んで、実際に運用する際の課題も見えてきました。そこで、前の提案を一歩具体化し、町の仕事を支える仕組みとして、どのように始められるかを考えます。他の自治体や組織で仕事をしている方にも、何か一つ参考になれば幸いです。
共通項目の正本と、確認・更新の責任を決める。
公開用連絡先から始め、効果と負担を確かめる。
照合や下書きを支援させ、人が根拠を確かめる。
01 / 回答を出発点に町が示してくれた課題を、設計の手がかりにする
今回の回答には、おおむね次の内容が記されていました。これは回答の要約です。[2]
- 共通の事業者台帳を持つことには有益性がある。
- 各課が保有する情報の分野が異なり、台帳の管理担当課を定めることが難しい。
- 各課が参照できる仕組みが必要であり、異なる更新情報の正しさを判断することも難しい。
- 各所属で情報管理を徹底し、ホームページ掲載時には二人以上での読み合わせ等を行う。
担当や更新手順の調整に手間がかかることは理解できます。共通台帳を作った瞬間に、すべての問題が消えるとも思いません。人員も時間も必要です。
ただ、各課で別々に管理していても、情報の食い違いは生じます。今回示された難しさを、「誰が確認するか」「どう不一致を見つけるか」を決める材料にしてはどうでしょうか。
共通台帳の有益性を認めていただいたことを、次の小さな試行につなげたい。
町全体の姿勢を、この一通の回答から決めつけることはできません。庁内の事情を外からすべて把握することもできません。それでも、部門間の調整の難しさを理由に改善が止まり続ければ、町民にも職員にも負担が残ります。だからこそ、始められる範囲を一緒に考える余地があると思います。
02 / 管理の役割全体を見る人と、現場で確かめる人をつなぐ
一元管理を考える際には、全体の管理と、個々の情報の確認を分けると整理しやすくなります。例えば、次のような役割分担です。
| 役割 | 主に担う仕事 |
|---|---|
| 全体の管理担当 | 登録項目、更新手順、責任分担を定める。重複や不一致について各課を調整する。 |
| 事業者と接点のある各課 | 業務の中で得た情報を確認し、担当する項目を登録・更新する。 |
| システムの管理担当 | 閲覧・編集権限、変更履歴、バックアップなどを管理する。 |
三つの部署を新設するという意味ではありません。全体の管理担当が、各課の専門業務をすべて知り、すべての電話確認を引き受ける必要もありません。意見が分かれたときの調整先と判断する責任者を定めることが大切です。
また、一元管理は、全情報を直ちに一つの巨大なシステムに集めることだけを意味しません。各課に情報を残しながら、共通項目について「どれを正本とし、誰が更新するか」をそろえる方法もあります。
気をつけたいのは、各課の台帳をコピーして、さらに別の一覧を増やすことです。共通台帳の導入と同時に、どの二重入力をやめるかまで決めなければ、職員の負担が増えてしまいます。
03 / 情報の持ち方同じ会社でも、連絡先は一つとは限らない
町の回答を読み、前の記事の台帳案も、もう少し丁寧にする必要があると感じました。前の記事では「1行1事業者」と簡潔に説明しましたが、実際には本社、営業所、部署、連絡先の用途まで区別する必要があります。
同じ会社でも、営業の窓口と保守の窓口では電話番号が異なります。本社と営業所では住所も異なります。これらは、どちらも正しい情報として登録できます。
事業者の正式名称・管理番号/拠点・部署/連絡先とその用途/確認担当課/確認日と確認先・根拠/必要に応じた適用開始日/公開の可否/掲載しているページ
法人番号がある事業者は、その番号を識別に使うことも検討できます。ただし、法人番号だけで支店や部署まで区別できるわけではありません。法人番号がない事業者・団体を含め、町の管理番号と拠点等の区分を組み合わせる方法があります。
同じ窓口について二つの番号が出てきたときには、確認が必要です。新しく入力された方を自動的に正しいとするのではなく、確認の手順を設けます。
- 不一致を見つけた課が、変更候補と確認根拠を記録する。
- 担当課が事業者等に、用途・変更の有無・適用日を確認する。
- 確認済みの情報を反映し、関係課と掲載担当に知らせる。
- 未解決なら「確認中」とし、対応責任者と確認期限を残す。
最終確認日は、その後に変更がないことまで保証しません。業務上の接触や変更の連絡を受けた際の更新と、必要に応じた定期確認を組み合わせていくことになります。
04 / 誤りを減らす仕組み読み合わせと、元データの確認を組み合わせる
二人以上での読み合わせは、転記ミスを減らすために役立ちます。一方、参照した資料そのものが古い場合は、その古い情報を二人で確かめることになってしまいます。
そこで、今回の誤りが、入力ミス、古い資料の参照、変更連絡の反映漏れのどこで生じたかを、可能な範囲で確認することが、対策を選ぶ手がかりになると思います。回答メールには、この原因の詳細は記されていませんでした。[2]
さらに、台帳の連絡先と、それを掲載しているページや配布資料を対応づけておけば、変更時に直すべき箇所を探しやすくなります。将来の改修では、確認済みの情報を複数のページへ反映できる仕組みも検討できます。
共通化には、間違った更新が広く反映されるという別のリスクもあります。確認してから反映する手順、変更履歴、訂正・復元の方法を併せて設ける必要があります。共通台帳の作成と、その品質を保つ運用は、一緒に考えたいところです。
05 / 最初の三か月公開用の連絡先、数十件から試してみる
最初の対象は、町ホームページに載せる事業者名、住所、公開用の連絡先に絞ってはどうでしょう。複数課が関わる数十件程度から始める案です。件数や期間は、町の実情に合わせて決めればよいと思います。
- ① 棚卸しと役割分担対象情報と掲載箇所を洗い出す。共通項目、確認担当、正本、更新手順を決める。
- ② 既存環境で小さく運用庁内で認められた道具で、権限や変更履歴を確保できるか確認する。対応できる部分と追加投資が必要な部分を分ける。
- ③ 効果と負担を測る開始後三か月程度を目安に結果を振り返り、対象の拡大や改修の必要性を判断する。
測るのは、台帳を作った件数だけではありません。不一致の発見数と解消数、変更を把握してから掲載を直すまでの時間、確認期限を過ぎた件数、職員の確認・転記時間などが考えられます。
試行直後に不一致の発見が増えても、従来見えていなかったものが見つかった可能性があります。新たな誤りの発生と区別して評価する必要があります。二重入力や重複した照合が減ったかも確かめ、結果を簡潔に町民へ伝えていただければ、取り組みを理解しやすくなるでしょう。
06 / AIと日常業務使えるデータを、今日の仕事の中で育てる
ここからが、今回私の最も伝えたいことです。AIを庁内業務で活用していくなら、日々作成する情報を、人にもシステムにも意味の分かる形で蓄積することが重要だと考えます。
デジタル庁は、組織やシステムの間でデータを共有・連携するためのひな形として、政府相互運用性フレームワーク(Government Interoperability Framework:GIF)を提供しています。必要な項目の部分利用や、システム更新・データ再登録に合わせた段階的な導入も案内されています。[3][4]
独立行政法人情報処理推進機構(Information-technology Promotion Agency:IPA)も、AIの活用を支える、正確で新しい信頼できるデータの整備と、適切なデータ設計・管理の重要性を説明しています。[5]
これらを町が直ちに全面導入しなければならないという意味ではありません。共通管理を考えるための参考資料は、すでに公開されています。
事業者・施設の一覧は、項目を分けて保存する。制度説明や議事録は、見出し、対象期間、版、出典が分かるようにする。掲載用の文書に加え、更新・再利用できる元データを残す。
すべてを同じ表にする必要はありません。AIが文章を読み取れることと、行政の案内や判断に安心して使えることも、同じではありません。いつの情報か、誰が確認したか、どの資料を根拠にしたか、利用できる範囲はどこまでかを確かめられることが大切です。
この土台があれば、AIに任せる仕事も具体化できます。次は、町への提案として考えた用途です。町での実施を確認したものではありません。
| 仕事 | 道具と人の分担案 |
|---|---|
| 資料から情報を拾う | AIが事業者名や連絡先を抽出し、出典を付けて下書き。職員が確認する。 |
| 重複・不一致を探す | AIが表記の違いを含む候補を提示。番号の完全一致などは通常のプログラムで照合する。 |
| 更新を促す | 期限や変更情報から確認対象を抽出。担当者が確認し、反映を判断する。 |
| 案内文を直す | 確認済み情報を基にAIが文案を作成。職員が内容と公開範囲を確かめる。 |
AIが示した候補には、見落としも取り違えもあり得ます。「AIで点検した」という記録だけで品質を保証するのではなく、どこを何と照合し、人が何を確認したかを残すことが必要です。試行では、既知の食い違いを検出できるか、誤った警告が多すぎないかも確かめたいと思います。
庁内の共通管理、庁内共有、町民への公開、外部AIサービスへの入力は、それぞれ範囲を分けて考えます。公開用の連絡先と非公開の担当者情報等を区別し、認められた環境で、必要な範囲を扱う設計が前提です。
今後のシステム更新や調達でも、データを一般的な形式で取り出せること、項目の意味が分かること、変更履歴や権限を管理できること、将来の移行・連携ができることを、目的と費用に応じて検討してほしいと思います。これは、町の情報資産を継続して使えるようにする備えでもあります。
07 / 町民の立場から改善する費用と、今の方法を続ける費用
共通管理には費用も労力もかかります。しかし、現状の方法にも費用があります。誤った案内を信じて問い合わせをやり直す町民の時間、各課が同じ情報を繰り返し確認する手間、職員の異動で確認の経緯が失われること、将来データ整理をやり直す費用などです。
今回、その損失がどれほど発生したかを把握しているわけではありません。だからこそ、小規模な試行を通じて測り、比較することに意味があると思います。
改善に必要な費用と、今の方法を続ける費用。その両方を見て、町民にとってよい選択を考えたい。
すぐに全庁が動き出すとは期待していません。組織には予算、既存システム、担当の調整があり、時間が必要でしょう。それでも、公開用連絡先に対象を絞る試行が可能か、どの部署が検討を取りまとめるか、何が制約で、代わりに何ならできるか。このように問いを具体的にすれば、次の会話につながるはずです。
秘書広報室への御礼とともに、この構想を参考資料としてお伝えしたいと思います。情報システムや行政改革を担当する部署にも、検討の一材料として目を通していただければありがたいことです。
08 / 私自身が得ているもの調べ、考え、提案する。その積み重ねを残したい
町の対応がいつ変わるかは、私には分かりません。一方で、この取り組みを通じて、私自身がすでに得ているものはあります。
AIと対話し、資料を読み、返ってきた回答を考え、具体策に書き直す。そのたびに、自分の理解の足りなさにも気づきます。「台帳を一つにすればよい」と考えていたところから、用途の違い、更新責任、確認の記録、職員の負担まで考えが広がりました。
私にとって、この過程そのものが、頭を使い、新しいことを学ぶ大きな刺激です。行政が動く前から、学びという収穫はすでに得ています。
提案を公開しておけば、町役場の外にいる方にも届くかもしれません。小さな自治体や会社、さまざまな組織で働く誰かが、自分の仕事に引き寄せて考えてくれたらうれしい。これからも、回答への感謝と、よりよい仕組みへの期待を、記録として積み重ねていきたいと思います。
この記事は、町からの回答と公開資料を基に、筆者がAIと対話しながら構成・推敲した提案です。町の内部システム、人員、費用、現在の詳細な運用は確認できていません。提案の実施には、現場での検討と検証が必要です。
参考資料・出典
[1]前田利人「一桁の違いをAIが見つけた ── 三芳町のWebページを『点検できる町』へ」、朝日センチュリーみずほ台住人ブログ、2026年9月26日公開・9月28日追記。
https://www.ashct.com/2026/09/ai-web.html
[2]三芳町秘書広報室「町ホームページ誤記載についてのご意見につきまして(回答)」、2026年9月30日受信。筆者宛ての個別回答メールのため公開URLなし。本記事では要旨を紹介。
[3]デジタル庁「政府相互運用性フレームワーク(GIF)」。
https://www.digital.go.jp/policies/data_strategy_government_interoperability_framework
[4]デジタル庁「よくある質問:政府相互運用性フレームワークについて」(Q5・Q6)。
https://www.digital.go.jp/policies/data_strategy_government_interoperability_framework_faq_01
[5]独立行政法人情報処理推進機構「AIのためのデータ環境整備」。
https://www.ipa.go.jp/digital/ai/data.html
資料確認日:2026年9月30日
コメント
コメントを投稿
コメントを歓迎いたします。
朝日センチュリーみずほ台の住人がより快適なマンション生活を送ることできるようにみなさんと一緒に考えてゆきたいと思います。