カップ麺がマンション防災に向かないワケ
その災害マニュアルは戸建て向けだった!
マンション住民にとって、大規模修繕と並んで大きな課題となりつつあるのが、災害対策だ。巨大地震に加え、超大型台風や竜巻、さらに火山の大噴火まで――。日本では自然災害が絶えない。マンションの深刻な被害こそあまり聞かないが、11月22日には震度6弱の大地震が、長野県北部を襲ったばかりだ。
防災マニュアルはありますか?
リーマン・ショック以降、マンションを終の住処にする人が増えたという。マンションの寿命は長く、大事に修繕すれば50年、100年もつ。20~30年前までは一戸建てを手に入れる前での”一時しのぎ”の意味合いも強かったが、高齢化や都心回帰、さらには災害に対する耐性が評価されている。
東日本大震災から3年半が過ぎ、マンションの防災体制も昔より整ってきたように見える。新築の大規模マンションでは非常用倉庫に食料や非常用発電機などが完備されている物件もある。だが、住民すべてがその中身や使い方をきちんと把握しているだろうか。
災害時に理事会や住民がどう対応するかをまとめた「防災マニュアル」は、今やほとんどの管理会社にはあるようだ。一方、個別のマンションでは対応がまちまちで、自分のマンションが高層か低層か、縦に長いペンシル型か横に広い「コの字型」かなど、構造を踏まえたオリジナルのマニュアルを備えているマンションはまだ少ないだろう。
マニュアルがあったとしても、住民全員がきちんと読んでいるか。年に何度か開かれる防災訓練で、実際の災害を想定した練習ができているか。
東日本大震災は平日昼間に発生した。理事長や防災担当者が会社から帰って来られない事態も十分に想定できるのだ。
災害対策には常識のウソというか、マンション防災に向いていないノウハウが大量にある。危機管理教育研究所の国崎信江代表は「女性や高齢者の視点が大切」と説く。
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たとえば、非常用発電機が地下倉庫にあり、1階の離れた場所にある貯水槽へ持って行こうとしても、女性や高齢者では重くて運べない。負傷者を担架で運ぶにも高齢者には骨が折れる、などのケース。防災訓練でわかることが多いが、実際の災害が先に来てしまったら大変なことになってしまう。
備蓄倉庫にある非常食としてカップ麺はポピュラーだが、意外に使い勝手が悪い。まず、お湯が必要で貴重な燃料を消耗する。また、沸かしたお湯は1回カップに入れたらおしまい。もし残しても、捨てるしかない。カップ麺を備えるなら、それを食べるための燃料と水は飲料水とは別に確保しておくべきなのだ。
子どもの頃からよく言われた、「地震が来たら机の下へ避難しろ」というのも、マンションでは逆に危険な場合もあるので要注意だ。マンションの高層階では横揺れが激しくなるので、固定していない家具は飛び回るように動く。物が置いていない廊下のほうが安全な場合もあるのだ。
「断水に備えて、風呂に水を貯めておけ」も、マンションでは間違いだ。水漏れの恐れがあるし、配管が破損していないか業者が確認するまで水を流せないので、部屋で水を腐らせてしまうからだ。こうした対策はもっぱら一戸建てが日本の住居の中心だった時代のノウハウなので、マンションにはマンション用の防災が必要になるのだ。
日頃の住民の接し方でも災害対応度はわかる
マンションの理事たちに話を聞くと、「防災訓練をやっても人が集まらない」「そもそも管理組合の活動に不参加の住民が多い」といった悩みも聞く。いざという時に住民同士、あるいは地域と協力し合うには、平時のコミュニケーションが欠かせない。
マンション防災の達人といえる理事会が熱心に行っているのは、本番さながらの高度な防災訓練だけではない。それ以上に重要なのは、日常的な住民のつながりを深めるイベントや仕組み作りだ。防災訓練にしても、子どもが非常用設備を回ってくるスタンプラリーとか、賞味期限切れが近い非常食を使った炊き出しなど、集う楽しみを付加している。
東京都中央区など、地域での防災対策に取り組むマンションへの支援を積極的に行う自治体も増えてきている。人任せにしないマンション防災を、住民一人ひとりが真剣に考えるべき時期にさしかかっているのではないか。
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