「本を1冊持っていき、1冊置いていこう」——カナダの小さな本箱から考えたこと
先日、タレントの東尾理子さんがカナダから発信された投稿に目が留まりました。街を歩くと100メートルおきに現れるという、可愛らしい木箱の写真。「Little Free Library(リトル・フリー・ライブラリー)」と呼ばれる、地域の本の交換箱だそうです。
ルールは驚くほどシンプルです。
- 読みたい本があれば、自由に持って帰ってよい
- 読み終えた本を、入れてもよい
- 返却は必須ではない。代わりに別の本を置いていってもよい
合言葉は「Take a Book, Leave a Book(本を1冊持っていき、1冊置いていこう)」。鍵はなく、監視もなく、お互いへの信頼だけで成り立っている。それが特別な試みとしてではなく、ごく当たり前の風景として住宅街に溶け込んでいるといいます。近所の人同士の交流、子どもの読書機会づくり、本のリユース、そして「ちょっと立ち話」が生まれる場所。最近では本だけでなく、パズルや種、手芸用品を分かち合う箱も増えているそうです。
この投稿を読んで、心が動きました。そして思ったのです。これは、私たちのマンションでもできるのではないか、と。
このマンションには、うってつけの場所がある
当マンションのB棟には集会室があります。20人ほどが入れる、ちょうどよい広さの部屋です。どうも空いている日がかならい多いように見受けます。
実はこの集会室、かつては棚にたくさんの本が並んでいました。ちょっとした図書室のような趣で、どなたかが意図を持って集められたものだったのでしょう。最近は足を運んでいないので、いまも残っているかは確かめていませんが、もし残っているなら、それはこの構想の「最初の蔵書」になります。この建物には、本を分かち合う土壌がもともとあったということですから。
思い描いているのは、ごく身軽な仕組みです
大げさな図書館を作ろうという話ではありません。
- 棚に並んだ本は、住人ならどなたでも自由に持ち出せる
- 返しても返さなくてもよい。代わりにご自宅の一冊を置いていってくださっても嬉しい
- 貸出カードも名簿もなし。信頼だけで運用する
対象は、お子さんから大人まで住人ならどなたでも。ただ、私が特に思い浮かべているのは、私と同じ高齢の住人の方々です。
「借りた本を返しに行く」「新しい本が入ったか見に行く」——そんな小さな用事が、外に出るきっかけになります。棚の前で居合わせた方と「この本、面白かったですか」と一言交わす。それだけで十分です。本の背表紙は、その人の人生や関心を静かに語ってくれるものですから、初対面同士でも会話が生まれやすいのです。
また、ご自宅に「捨てられない本」を抱えていらっしゃる方は少なくないはずです。「誰かが読んでくれるなら」という受け皿があれば、大切な蔵書に第二の人生を与えることができます。
読み聞かせの会との連携という道
このマンションには、幼いお子さんたちを集めて絵本の読み聞かせをされているボランティアグループがあります。長く続けてこられた、実績のある活動です。
もしこの構想が形になるなら、ゼロから新しいことを立ち上げるのではなく、こうした先達の活動と手を組む形が自然だと感じています。たとえば読み聞かせの開催日に合わせて、集会室の一角に「交換本棚」を一本置かせていただく。絵本を卒業したお子さんの本の行き先ができ、孫世代と祖父母世代が同じ部屋に居合わせる。そんな多世代の交流が、副産物として生まれるかもしれません。
まずは、小さな問いかけから
理事会に大きな提案を持ち込む前に、まずこの場で皆さんにお尋ねしてみたいと思います。
「棚一本から、始めてみませんか」
面白そうだと思われた方、かつての集会室の本のことをご存じの方、読み聞かせの会に関わっていらっしゃる方——お声がけいただければ幸いです。カナダの街角に根付いたあの温かい風景の、ささやかな日本版を、この建物の中に作れたらと夢想しています。
(了)



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