今回のこの工事提案には専門的な内容が多く、掲示だけでは、点検で確認された異常の程度、交換を急ぐ技術的根拠、現在のケーブルが具体的にどの注意喚起の対象なのか、見積金額や工法の妥当性などが十分には分かりません。
安全対策の必要性を否定するものではありません。しかし、高額な支出を伴う以上、管理会社や施工会社の説明だけでなく、電気主任技術者の所見、点検結果、複数社の見積もりなどを管理組合として確認し、居住者にも分かる形で示すことが必要だと思います。
この記事が、工事への単純な賛否ではなく、必要な安全性を確保しながら不要・過大な支出を防ぐための判断材料になれば幸いです。
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結論からいうと、この掲示は、
マンション側の高圧電気設備について事故のリスクがあるとして、A・D・E・F棟の高圧ケーブルを交換し、事故をマンション内で食い止める安全装置「UAS」を新設する工事を、9月の通常総会に提案する
という内容です。
理事会が工事の実施を決定したというより、現時点では「総会の議案として提出することを決めた」段階です。
1.そもそも「自家用電気工作物」とは
ここでいう「自家用」は、各家庭が持っている家電や室内配線という意味ではありません。
マンションが高圧の電気を受け取り、建物内で使える電圧に変えるために所有・管理している設備全体を指します。一般的には、次のような設備が含まれます。
- 電力会社から電気を引き込む高圧ケーブル
- 受変電設備
- 変圧器
- 遮断器・開閉器
- 保護装置
今回の対象は、主としてマンション共用部にある大きな受電設備の話であり、各住戸内の分電盤やコンセントを交換する工事ではありません。
ただし、工事時には対象棟で計画停電が必要になる可能性があります。
2.高圧ケーブルは何をしているのか
高圧ケーブルは、電力会社から供給される高圧の電気を、マンションの受変電設備まで運ぶ「太い幹線」です。
家庭の延長コードに例えると、個々の住戸の配線が枝なら、高圧ケーブルはマンション全体を支える太い幹に当たります。このケーブルの絶縁部分が傷むと、電気が外へ漏れる「地絡」や、電線同士が接触する「短絡」が起きることがあります。
経済産業省も、水分の影響を受ける敷設環境では、比較的新しい高圧ケーブルでも「水トリー」と呼ばれる絶縁劣化によって事故が発生することがあるとして、劣化の兆候が確認された場合には早期更新を求めています[1]。
なお、今回の掲示には「水トリーが発見された」とは書かれていません。点検で具体的にどのような異常や数値が確認されたのかは、この掲示だけでは分かりません。
3.UASとは何か
UASは、Underground Air Switch(地中線用気中開閉器)の略です。
簡単にいうと、
マンション内の高圧設備で重大な電気事故が起きたとき、マンション側の設備を電力会社の配電網から自動的に切り離す装置
です。
家庭にある漏電遮断器の「マンション高圧設備版」に近い役割、と考えると分かりやすいでしょう。ただし、実際には家庭用の漏電遮断器よりもはるかに大型で、保護継電器などと連動する専門的な設備です。
経済産業省・関東東北産業保安監督部の資料でも、PAS・UGS・UASなどの区分開閉器を設けることは、波及事故を防ぐうえで有効とされています[2]。
4.「波及事故」とは
マンション内部の高圧ケーブルなどで事故が起きたとき、本来はマンションだけを素早く電力系統から切り離す必要があります。
ところが、適切な区分開閉器がない、あるいは保護装置が正常に作動しないと、電力会社側の大きな遮断器が動作し、同じ配電線につながっている周辺の住宅・店舗・施設まで停電させることがあります。
これが「波及事故」です。
マンション内の高圧設備で故障
↓
UASが正常に作動
↓
マンションだけを切り離す
↓
周辺地域への停電拡大を防ぐつまりUASは、マンション内の停電を必ず防ぐ装置ではありません。むしろ、事故が起きたマンションをいったん停電させて、周囲への被害拡大を防ぐ装置です。
5.なぜ理事会は「緊急性が高い」と判断したのか
掲示から読み取れる理事会の判断理由は、次の3点です。
① 現在の高圧ケーブルについて不具合の懸念がある
掲示には「リコールが多いメーカー製」とあります。
ただし、この表現だけでは、
- 現在のケーブルそのものがリコール対象なのか
- 同じメーカーの別製品に不具合事例が多いのか
- 法的なリコールではなく、メーカーの注意喚起や交換推奨なのか
が分かりません。総会前に、メーカー名、型式、製造年、具体的な注意喚起文書を確認する必要があります。
② UASが設置されていない
事故時にマンション設備を電力会社の系統から切り離す設備がないため、周辺地域まで停電させる波及事故につながる可能性がある、という説明です。
③ 事故後では復旧に時間と費用がかかる
事故が起きてからケーブルを手配すると、資材の納期、停電調整、掘削やケーブル敷設などに時間がかかる可能性があります。
また、事故で周囲に損害が生じれば、管理組合の責任が問題になる可能性もあります。ただし、掲示にある「高額な賠償を求められることがある」という部分は、事故原因、管理状況、過失の有無、実際の損害などによって判断されます。事故が起きれば直ちに管理組合が高額賠償を負う、と確定しているわけではありません。
6.居住者に直接関係すること
工事が実施される場合、一般居住者には次の影響が考えられます。
- 対象棟の計画停電
- エレベーターの停止
- 給水ポンプの停止による断水
- インターホンなどの停止
- 共用照明やテレビ・インターネット設備への影響
- 修繕積立金などからの工事費支出
実際に何が停止するかは、マンションの受電・給水方式によって異なります。掲示だけでは停電範囲や時間は確認できません。
7.総会までに確認したい重要事項
工事の必要性には一定の合理性があります。しかし、高額な工事である以上、総会資料では少なくとも次の内容を確認したいところです。
4月10日の点検で、具体的に何が確認されたのか
測定値、劣化判定、写真、点検業者・電気主任技術者の所見。現在のケーブルのメーカー、型式、製造年、使用年数
本当に対象製品がリコールまたはメーカー注意喚起の対象なのか。A・D・E・F棟だけが対象となる理由
B・C棟などは別系統なのか、すでに交換済みなのか。UASの設置場所、台数、保護範囲
どの設備事故まで切り離せる設計なのか。工事費の内訳
ケーブル交換、UAS、掘削、復旧、停電対応、設計監理などが区分されているか。複数社の見積もりを取ったか
価格だけでなく、工法、保証、ケーブル仕様、工期も比較する必要があります。採用する新しいケーブルの耐水性
経済産業省の事故情報では、水トリーへの耐性が高い「E-Eタイプ」への交換が再発防止策として挙げられています[3]。工事中の停電時間と居住者対応
エレベーター、断水、医療機器使用世帯、冷蔵庫、機械式駐車場などへの対応。管理組合の保険で波及事故がどこまで補償されるか
施設賠償責任保険などの契約内容を確認する必要があります。
私の評価
高圧ケーブルの劣化対策とUASの設置は、単なる設備の美観や利便性ではなく、感電・火災・長期停電・周辺への波及事故を防ぐための安全対策です。したがって、理事会が重要な問題として総会に諮ろうとしていること自体は妥当だと思います。
一方、この掲示だけでは、
- 点検で確認された異常の具体的内容
- ケーブルが本当にリコール対象なのか
- 工事の金額
- 交換時期の技術的根拠
- UASの設計と保護範囲
- 見積もり比較
が分かりません。
したがって居住者としては、「専門的だから反対する」あるいは「危険と言われたからそのまま賛成する」のではなく、総会資料で技術的根拠と費用の妥当性を確認したうえで判断するのが適切です。
参考資料・出典
[1]「更新推奨時期に満たない高圧ケーブルにおける水トリー現象に係る注意喚起」経済産業省、2025年6月27日
経済産業省の注意喚起
[2]「令和4年度 自家用電気工作物設置者及び電気主任技術者セミナー資料」関東東北産業保安監督部・東京電力パワーグリッド、2023年3月
関東東北産業保安監督部の資料
[3]「電気事故情報(令和6年度)」中部近畿産業保安監督部近畿支部、2026年確認
高圧ケーブル事故と再発防止策
居住者としては、どの程度の費用がかかるのかも大きな関心事です。
ただし、現在公表されているのはわずか11行程度の掲示だけです。ケーブルの種類・太さ・総延長、UASの台数、既存配管を再利用できるか、掘削や舗装復旧が必要かといった情報がないため、現段階では、このマンションの工事費を根拠をもって算出することはできません。
以下の金額は、公開されている他施設の工事例などを参考に、考えられる規模感を仮に示したものです。今回の工事の見積価格や適正価格を示すものではありません。
限られた情報からあえて幅を置いて考えると、税込1,500万~3,000万円程度になる可能性があります。ただし、既存配管を利用でき、ケーブルが短ければ1,000万円前後に収まる可能性がある一方、掘削や配管更新が必要なら3,000万~5,000万円を超える可能性もあります。
大まかな費用構成

東京電力グループが示している標準的なUAS新設例は税込110万円ですが、これは「作業場所が確保され、既存ケーブルにも余裕があり、停電3時間」という施工しやすい条件です[4]。マンションの実工事では、キャビネット、保護継電器、ケーブル端末処理、停電調整などを含め、もう少し高くなる可能性があります。
公共工事の実例にもかなり幅があります。
- 学校の高圧ケーブル更新:約166万円[5]
- 高圧ケーブルと高圧負荷開閉器の更新:約326万円[6]
- 複数建物へ電気を送る市民センターの高圧ケーブル更新:約1,282万円[7]
- 3か所の高圧受電所のケーブル交換:約1,199万円[8]
工事名だけではケーブルの長さや掘削範囲が分からないため単純比較はできませんが、今回のように4棟を対象とする工事なら、数百万円だけで終わる小規模工事より、1,000万円台から数千万円規模になる可能性が高いと考えます。
金額を大きく左右する条件
最も大きいのはケーブルそのものの値段より、次の施工条件です。
- 各棟までのケーブルの長さ
- 4棟それぞれが独立したケーブル系統か
- 地中の既存配管へ新ケーブルを通せるか
- 古いケーブルを抜き取れるか
- 道路、駐車場、植栽部分の掘削が必要か
- マンホールやハンドホールに浸水・劣化がないか
- 一斉停電で施工できるか、棟ごとの切替が必要か
- 仮設電源が必要か
- 夜間・休日工事になるか
- 新しいケーブルが耐水トリー性の高い仕様か
特に、古いケーブルを抜いて同じ管路に新しいケーブルを通せる場合と、道路や駐車場を掘り返して配管から作り直す場合とでは、1,000万円以上の差が出ても不思議ではありません。
総会資料で見るべき数字
見積書が出たら、総額だけでなく、最低限次の内訳を確認すべきです。
- ケーブルの種類・太さ・総延長
- 棟ごとの工事金額
- UASのメーカー・型式・台数・単価
- 掘削、配管、舗装復旧の数量
- 停電作業、試験、電力会社との調整費
- 設計・監理費
- 管理会社の工事管理費や手数料
- 諸経費の金額と比率
- 消費税を含むか
- 相見積もりの有無
例えば総額が2,000万円でも、それだけで高いとは判断できません。ケーブルが長く、4系統あり、掘削まで含むなら十分あり得ます。一方、見積額が高いか低いかは総額だけでは判断できません。ケーブルの仕様と延長、施工条件、工事範囲、諸経費などの内訳を確認し、同じ条件による複数社の見積もりを比較する必要があります。
したがって、現段階では、
工事費は条件により大きく変わるが、4棟の高圧ケーブル交換とUAS新設を合わせると、1,500万~3,000万円程度になる可能性がある。ただし、掘削や配管更新が必要なら、さらに高額になる。正確な判断にはケーブル総延長、施工方法、見積内訳、相見積もりの確認が不可欠である。
という表現になります。
参考資料・出典
[4]「電気設備の改修工事サービス」東京電力パワーグリッド、2026年7月31日確認
東京電力グループ パートナーズ・ナビ
[5]「高台小学校高圧ケーブル更新工事 入札結果」千歳市、2025年
千歳市入札結果
[6]「高圧ケーブル等更新工事 入札・契約状況調書」航空自衛隊、2024年
航空自衛隊の契約資料
[7]「市民センター高圧ケーブル更新工事」三鷹市、2025年
三鷹市契約資料
[8]「六甲アイランドN2バースほか2か所高圧ケーブル更新工事」神戸市、2017年
神戸市契約情報
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【この記事について】
この記事は、理事会の掲示内容と公表されている資料をもとに、生成AI(OpenAIのChatGPT・Codex)の助力を受け、専門的な内容を一般居住者にも分かりやすい形に整理したものです。最終的な確認、編集および公開はブログ運営者・前田利人が行っています。
本記事は、管理組合、理事会、管理会社または電気設備の専門業者による公式見解ではありません。また、掲示だけでは確認できない事項については、推定を含むことや確認できない範囲を明記しています。
専門性の高い設備に関する内容であるため、記述に誤り、不正確な点、疑問点がある可能性があります。理事、居住者、電気設備に詳しい方などで、訂正すべき点や補足情報をご存じの方は、コメント欄からお知らせください。
特に、4月10日に実施された点検の詳しい結果、現在の高圧ケーブルのメーカー・型式・製造年、UASの設置内容、工事見積書の内訳などについて、確認できる情報があればお寄せいただければ幸いです。

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