管理組合からの配布文書を読み、再発防止策と手続を考えました。
2026年8月23日の朝、「理事、大規模修繕委員の『なりすまし』発覚について(ご報告)」と題する文書が、朝日センチュリーみずほ台の各戸に配布されました[1]。
文書には、工事関係者が当マンションの居住者になりすまし、理事と大規模修繕委員に立候補していたことが判明した、という重大な内容が記されています。
管理組合の財産や大規模修繕工事の発注に関係する問題です。事実であれば、管理組合の意思決定過程に外部の利害関係者が入り込もうとした「重大な未遂事案」と受け止めるべきでしょう。
一方、事案が重大であるからこそ、再発防止策についても、感情的な反応ではなく、管理規約、国土交通省の指針、公平性、実効性の四つを踏まえて慎重に検討する必要があります。
この記事では、個人の責任や評価には立ち入らず、配布文書に書かれた内容を整理したうえで、管理組合の制度と再発防止策という観点から考えます。
配布文書に書かれていたこと
配布文書によれば、最近、マンションの大規模修繕を検討する住民組織に、修繕工事関係者が住民になりすまして入り込む事案が報道されているとのことです。
当マンションでも、次のようなことが起きたと説明されています。
工事関係者が、現居住者の名義変更届を提出して住民になりすました
名義変更から約3か月後に、理事と大規模修繕委員に立候補した
理事会の調査により、新聞で報じられた住民なりすましグループの首謀者の一人であることが分かった
登記されておらず応募資格がなかったため、応募を無効として管理組合から排除した
通常総会の前に発見できたため、総会への影響はなかった
名義変更に協力した住民は、現在は反省し、理事会の調査に協力している
文書はさらに、再発防止策として、理事と大規模修繕委員の選任について、次の要件を新設したと説明しています。
「登記期間」と「実居住期間」を、いずれも3年以上とする
就任時に利益相反に関する誓約書の提出を求める
誓約書の提出対象は、立候補者に限定する
これらを理事会で決定し、2026年8月11日から発効した
「なりすまし」を早期に発見したことは重要
まず評価すべきなのは、候補者が実際に理事や大規模修繕委員へ就任する前に、応募資格を確認し、問題を発見したことです。
大規模修繕工事では、数千万円、場合によっては億単位の資金が動きます。修繕委員は、工事内容、設計者、コンサルタント、施工会社などの選定に影響を与える可能性があります。
外部の工事関係者が住民を装い、自社または関係会社に有利な発注へ誘導しようとしたのであれば、管理組合の財産と意思決定の公正さに対する深刻な脅威です。
国土交通省も、修繕工事関係者が区分所有者になりすまして修繕委員会に入り込み、自社に有利な発注へ誘導しようとする事案が報告されていることを、2025年のマンション標準管理規約改正資料で明らかにしています。したがって、このような手口そのものは、管理組合の想像上の話ではありません。[2]
今回、候補者が当マンションの管理規約上の資格を満たしていなかったのであれば、既存の規約に基づいて応募を無効としたこと自体は、管理組合の防御措置として理解できます。
ただし、応募を無効にしたことと、その後に新たな「3年以上」という資格要件を設けたことは、別の問題として考える必要があります。
配布文書の記載と、確認できた事実は分けて考える
配布文書には、「住民なりすましグループの首謀者の一人」「当マンションの大規模修繕工事が、なりすましグループに狙われていることが判明した」と書かれています。
これらは非常に強い表現です。
現時点で私たち住民が直接確認できるのは、管理組合がそのように発表した、ということです。候補者の身元、勤務先、関係会社、新聞報道との同一性、当マンションを対象とした具体的な働きかけなどの調査資料は、配布文書には示されていません。
もちろん、個人情報や今後の調査への影響を考えると、すべてを住民へ公開できない場合はあります。それでも理事会には、個人を特定しない範囲で、次のような説明が求められるのではないでしょうか。
どのような確認によって、応募資格がないと判断したのか
「登記されていない」とは、区分所有権の登記がないという意味なのか
新聞報道の人物との同一性を、どのような方法で確認したのか
当マンションが狙われていたと判断した根拠は何か
名義変更届が、どのような確認を経て受理されたのか
配布文書では、「名義変更届」「登記されていない」「登記期間」という言葉が使われていますが、それぞれが何を意味するのか、必ずしも明確ではありません。
管理組合内部の名義変更届、住民票上の住所、区分所有権の登記は、それぞれ別のものです。再発防止を考えるためにも、どの確認手続が機能しなかったのかを明らかにする必要があります。
国土交通省に「3年以上」という基準はあるのか
結論からいうと、現在確認できる国土交通省の標準管理規約や関連資料に、理事または修繕委員になるためには「所有期間・居住期間が3年以上必要」とする全国一律の基準は見当たりません。
国土交通省の令和7年改正版「マンション標準管理規約」では、理事と監事は、原則として総会の決議により「組合員のうちから」選任するとされています。
同規約のコメントは、役員資格について、当該マンションに居住しているかどうかにかかわらず、区分所有者であることに着目して「組合員」としていると説明しています。
一方、それぞれのマンションの実情に応じて、「現に居住する組合員」という居住要件を加えることは可能とも説明しています。しかし、そこに「3年以上」という期間は示されていません。[3]
むしろ国土交通省が、今回のような「なりすまし」を防ぐために具体的に示しているのは、役員・専門委員の就任時に、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなどの顔写真付き身分証明書を提示してもらい、本人確認を行う方法です。[2]
したがって、「3年以上」という数字は、国のガイドラインをそのまま採用したものではなく、理事会が独自に設定した可能性が高いと考えられます。
ただし、外部のマンション管理士や弁護士などから助言を受けている可能性までは否定できません。理事会には、この期間を決めた根拠資料や専門家の助言の有無を明らかにしてもらう必要があります。
「3年以上」は実効的で公平な対策なのか
「3年間待たなければ役員や修繕委員になれない」という条件には、外部から短期間で入り込む人物を排除しやすくする効果はあるでしょう。
しかし、その一方で、いくつかの問題があります。
第一に、善良な新規所有者まで一律に排除してしまいます。
新しく住戸を購入し、マンション管理に関心を持ち、専門知識や経験を生かしたいと考えている人であっても、3年間は役員や委員になれません。
第二に、役員や委員のなり手不足を悪化させる可能性があります。
高齢化や居住者の減少によって、役員の担い手不足は多くのマンションで問題となっています。その中で、国の基準にもない一律の3年要件を追加すれば、候補者の範囲をさらに狭めることになります。
第三に、3年以上住んでいれば安全とは限りません。
長期間居住している人であっても、工事会社、設計会社、コンサルタント、管理会社などと仕事上または個人的な関係を持っている場合があります。反対に、新しい所有者であっても、本人確認と所有権確認ができ、工事関係者との関係がなければ、直ちに危険とはいえません。
第四に、期間要件だけでは、今回の問題の原因を十分に塞げません。
今回の核心は、居住期間が短かったことよりも、名義変更届を提出した人物について、本人、所有権、関係者とのつながりを十分に確認できなかったことにあります。
本人確認、所有権確認、勤務先・取引関係の申告、利益相反時の審議回避を組み合わせる方が、実効性と公平性の両面で優れていると考えます。
理事会だけで「3年以上」を決められるのか
当マンションの現行管理規約を確認すると、次のように定められています[4]。
第28条:区分所有者となったときに組合員資格を取得する
第33条:理事及び監事は、組合員、現に居住する組合員の配偶者、現に居住する成年の一親等以内の親族から、総会で選任する
第46条:規約の変更、使用細則の制定・変更、役員の選任・解任は総会の決議事項
第52条:理事会が決議できるのは、規約や使用細則の変更に関する「案」
第53条:専門委員会は、特定の課題を調査・検討し、その結果を理事会に具申する
第76条:規約、使用細則、法令のいずれにも定めのない事項は、総会の決議により定める
この構造から見ると、役員になれる人の範囲を実質的に狭める「3年以上」という条件を、理事会決議だけで新設し、直ちに発効させられるのかについては疑問が残ります。
既存の規約に合わない応募を無効とすることは、理事会が既存ルールを執行する行為です。
これに対して、「3年以上」という新しい資格を加えることは、既存ルールの執行ではなく、役員資格の変更に当たる可能性があります。少なくとも、総会での審議・決議が必要ではないか、慎重に確認すべき問題です。
大規模修繕委員については、別に「大規模修繕委員会細則」や「委員選任細則」があり、その中で選任基準の決定を理事会に委ねている可能性があります。そのため、最終的な判断には、2026年8月11日に何という文書のどの部分を変更したのかを確認する必要があります。
また、8月11日に発効したとされるルールが、住民には8月23日に初めて知らされたのだとすれば、周知前に発効させた理由についても説明が必要です。
利益相反誓約書を「立候補者だけ」に限定する問題
利益相反とは、管理組合の利益のために判断すべき人が、勤務先、取引先、家族、知人などとの関係によって、別の利益を優先するおそれがある状態を指します。
利益相反対策を導入すること自体は重要です。
しかし、配布文書にあるように、誓約書の提出対象を「立候補者だけ」に限定するのは不十分です。
役員や委員になる経路には、立候補だけでなく、推薦、輪番、理事会による欠員補充などがあります。立候補者だけに誓約書を求めても、推薦や輪番で就任する人は確認を受けないことになります。
確認の厳しさが、就任経路によって違ってよい理由はありません。
利益相反の確認は、少なくとも次の人を対象とすべきです。
立候補、推薦、輪番を問わず、すべての役員候補者
理事会が欠員補充で選任する役員
すべての大規模修繕委員
工事や事業者選定に関与する専門委員
必要に応じて、設計者、コンサルタント、管理会社、施工候補会社
また、誓約書を就任時に一度提出するだけでは不十分です。
就任後に勤務先や取引関係が変わることもあるため、毎年度の更新と、具体的な工事・契約を審議する際の個別申告を組み合わせる必要があります。
利害関係がある人は、関係を隠さず申告し、その案件の評価、審議、採決から外れることが基本です。
ただし、勤務先や取引関係に関する情報は個人情報でもあります。すべてを一般公開するのではなく、管理組合との契約や工事発注に関係する範囲に限定して申告し、管理者を定めて適切に保管する必要があります。
必要なのは「3年」ではなく、多層的な確認制度
再発防止策は、単一の条件に頼るのではなく、複数の確認を重ねるべきです。
1.本人確認
役員・委員の候補者全員について、顔写真付き身分証明書で本人確認を行う。
これは、国土交通省が「なりすまし」対策として具体的に示している方法です。
2.所有権と応募資格の確認
区分所有者本人であることを登記事項証明書等で確認し、管理組合の組合員名簿と照合する。
配偶者や一親等以内の親族として応募する場合は、規約上の関係と実居住を確認する。
第三者から名義変更届が提出された場合は、区分所有者本人に直接確認する。
3.勤務先・取引関係の申告
候補者本人や近親者が、建設会社、修繕会社、設計事務所、コンサルタント、管理会社などと関係を持っている場合は、管理組合の工事や契約に関係する範囲で申告する。
関係があること自体を直ちに不適格とするのではなく、申告内容に応じて審議回避などの措置を取る。
4.すべての候補者に同じ手続を適用
立候補者だけでなく、推薦、輪番、欠員補充を含むすべての候補者に、同一の本人確認と利益相反確認を行う。
5.選任・審議過程を記録
誰が応募資格を確認し、どの資料を確認し、どのような理由で適格または不適格と判断したのかを議事録に残す。
個人情報を除いた概要を組合員に説明できるようにする。
6.事業者選定の透明性を確保
今後の設計者、コンサルタント、施工会社の選定では、原則として複数候補を比較し、評価基準を事前に定める。
選定理由と審議経過を議事録に残し、候補者と管理会社、役員、委員との間にある紹介、資本、取引その他の関係を確認する。
選定前の見積金額や機密情報については、公正な競争を守るため適切に管理し、選定後に、結果と選定理由を組合員へ説明する。
複数候補を比較しない場合は、その理由を記録し、組合員へ説明する。
理事会に確認したいこと
今回の件については、個人を追及するのではなく、制度を確認するために、理事会へ次の説明を求めることが必要だと考えます。
2026年8月11日の変更について
2026年8月11日の理事会では、どの文書に、どのような変更を加えたのでしょうか。変更した文書の正式名称、変更前後の条文及び施行日を明らかにしてください。
併せて、この変更を理事会決議のみで行うことができるとする管理規約・細則上の根拠条文と、審議及び決議の経過が分かる理事会議事録を示してください。
「3年以上」とした根拠について
登記期間及び実居住期間を「3年以上」とした根拠となる法令、国土交通省等のガイドライン、専門家の意見または参考資料がある場合は、その資料名と該当箇所を示してください。
また、顔写真付き身分証明書による本人確認、所有権確認、勤務先・取引関係の申告など、より制限の少ない方法では不十分と判断した理由を説明してください。
今後の事業者選定について
今後、設計者、コンサルタント及び施工会社を選定する際は、次の事項を管理組合の方針として明確にしてください。
原則として複数の候補を比較すること
評価基準を選定前に定めること
選定理由及び審議の経過を議事録に残すこと
候補者と管理会社、役員及び委員との紹介、資本、取引その他の関係を、選定後に組合員へ開示すること
利害関係を有する者は、その候補者に関する評価、審議及び採決に加わらないこと
複数候補を比較しない場合は、その理由を記録し、組合員へ説明すること
今回の件をどう受け止めるか
今回の文書は、当マンションの大規模修繕をめぐって、外部の利害関係者が管理組合の意思決定過程に入り込むおそれが現実にあることを住民に知らせたものです。
早期に応募資格を確認し、就任前に問題を発見したことは重要です。
一方、再発防止策として新設された「3年以上」という一律要件には、国のガイドライン上の根拠が確認できず、善良な新規所有者まで排除するという公平性の問題があります。役員や委員のなり手不足を悪化させる可能性もあります。
さらに、当マンションの管理規約を読む限り、役員資格を実質的に変更する内容を理事会だけで決定し、総会を経ずに発効できるのかについても、確認が必要です。
本当に必要なのは、単に入口を3年間閉ざすことではありません。
本人確認、所有権確認、勤務先・取引関係の申告、利益相反時の審議回避、事業者選定過程の記録と説明を組み合わせ、誰が役員・委員になっても公正な判断を確保できる仕組みをつくることです。
今回の出来事を、特定の個人への非難だけで終わらせず、管理組合の選任手続、情報管理、利益相反対策、事業者選定の透明性を見直す機会にすることが重要だと考えます。
参考情報:管理会社が工事を請け負う場合の利益相反管理
以下は今回の「なりすまし」事案とは直接別の問題ですが、利益相反対策を考えるうえで参考となる情報です。
当マンションのスロープ改修工事資料によれば、管理業務を受託している朝日管理株式会社が、同工事の元請・工事請負者となっています[7]。
資料に記載された税込工事費は4,389万円で、関連項目を含む棟別振り分け表の総額は約4,450万6,000円です。施工は複数の一次下請会社が担当し、施工会社の見積比較表も作成されていました。
管理会社が管理業務と工事請負を兼ねたという事実だけで、不正や違法を意味するわけではありません。複数社の見積比較が行われていたことも確認できます。
ただし、管理会社が工事仕様の作成、見積取得、候補会社の評価、元請としての受注、施工監理など複数の役割を兼ねる場合は、発注者である管理組合の利益と、受注者である管理会社の利益が緊張関係に立つ可能性があります。
国土交通省の現行「マンション標準管理委託契約書及び同コメント」は、理事会方式のマンションであっても、管理会社またはその関連会社が工事を受注する場合や、管理会社が施工会社の選定業務を行う場合には、工事費用の内訳と積算根拠を管理組合へ説明することが望ましいとしています。
また、管理会社が、役務の提供を伴わない紹介手数料、仲介料、謝礼などを、総会の承認なしに管理組合以外の者から受け取ることを防ぐ規定も示されています。[5]
国土交通省は、大規模修繕工事の発注において、施工会社からバックマージンを受け取る設計コンサルタントが、割高な工事や過剰な仕様へ誘導する事例についても注意喚起しています。[6]
したがって、今後の大規模修繕では、利益相反確認を住民の立候補者だけに求めるのではなく、管理会社、設計者、コンサルタント、施工候補会社も含む発注関係者全体に適用することが望ましいでしょう。
具体的には、関連会社、下請会社、紹介関係、手数料、リベート、過去の取引関係などについて書面で申告を求め、管理会社自身または関連会社が受注候補になる場合は、仕様、見積比較、評価、工事監理について、管理会社から独立した専門家による確認を受ける方法が考えられます。
ただし、過去のスロープ工事と今回の「なりすまし」事案との間に、直接の関係が確認されたわけではありません。両者を結び付けるのではなく、今後の管理組合運営で利益相反管理をどこまで広げるべきかを考えるための、別個の参考事例として扱うのが適切です。
参考資料・出典
[1]「理事、大規模修繕委員の『なりすまし』発覚について(ご報告)」、朝日センチュリーみずほ台管理組合、2026年8月23日配布
[2]「令和7年 マンション標準管理規約の見直し」、国土交通省、2025年
[3]「令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)」、国土交通省、2025年10月17日改正
[4]「朝日センチュリーみずほ台管理規約」、朝日センチュリーみずほ台管理組合、2014年9月28日改訂
[5]「マンション標準管理委託契約書及び同コメント」、国土交通省、2025年12月12日
[6]「マンション大規模修繕工事に関する実態調査を初めて実施」、国土交通省、2018年5月11日
[7]「朝日センチュリーみずほ台 スロープ改修(拡幅)工事説明会資料」、朝日センチュリーみずほ台管理組合・朝日管理株式会社、2024年
理事会配布資料に...「わずか3ケ月で理事 と大規模修繕委員に立候補していました。」とあるのですが、この表現に納得がいきません。当マンションの理事は輪番制でいわゆる立候補制ではないと私は理解していました。各フロア3戸に順繰りに理事(当番)が割り当てられ、その3戸で話し合い、理事を選出するのではなかったかなぁ?
「理事に立候補」という説明への疑問
配布文書には、当該人物が「わずか3か月で理事と大規模修繕委員に立候補していました」と書かれています。
しかし、当マンションの理事は、一般的な公募による立候補制ではありません。各エレベーターフロアの3戸に順番に理事担当が割り当てられ、その3戸で話し合って理事候補者を選出し、総会で正式に選任する仕組みです。
したがって、ここでいう「理事に立候補」とは何を意味するのかが明確ではありません。
当該住戸・フロアが今回の輪番対象であり、3戸の話し合いの中で本人が理事役を申し出たのであれば、正確には「輪番対象フロアの理事候補者として選出された」と説明すべきでしょう。
一方、輪番対象ではない人物が自ら応募し、理事会がそれを受け付けたのであれば、通常の選任方法とは異なる手続が行われたことになります。その場合は、立候補を認めた根拠、応募を受け付けた経緯、候補者名簿に載せるまでの確認手続について説明が必要です。
また、大規模修繕委員が公募制であるため、理事への選出と修繕委員への応募という異なる手続を、配布文書が一括して「立候補」と表現した可能性もあります。
これは単なる言葉の問題ではありません。なりすましが、輪番による候補者選出、理事会による資格確認、公募委員の受付のうち、どの手続を通過しかけたのかによって、必要な再発防止策が異なるからです。
理事会には、当該人物がどのような経路で理事候補者となり、大規模修繕委員に応募したのかを、両者を区別して説明していただく必要があります。
このマンションの理事に立候補できるのは、輪番制で選出された人という規定は規約には無いようですね。今までは"惰性"でやっていたのですかね?毎年、理事の選任がなされますが、輪番制であると思い込んでいた。しかし、規約上はだれでも居住者なら立候補できるのかな?そして、二年任期が終わった時に再度立候補するのも禁じられていないようですね。
結論は次のとおりです。
- 現行の管理規約本文には、「輪番で指定された人だけが理事候補になれる」という規定は見当たりません。
- ただし、輪番制が単なる「惰性」だったとも、現時点では言い切れません。第38期通常総会議事録には、明確に「管理組合役員改選ルールに基づき」と書かれています[2]。
- 「居住者なら誰でも立候補できる」わけではありません。役員になれる人の範囲は管理規約第33条で限定されています[1]。
- 2年の任期が終わった後の再任は、管理規約第34条が明文で認めています[1]。ただし、実際に再び候補者になれる手続は、未確認の「役員改選ルール」に左右される可能性があります。
1.輪番制は管理規約に書かれているのか
現在確認できる管理規約には、次のような規定は見当たりません。
- 各階の3戸から1人を選ぶ
- 部屋番号順に持ち回りとする
- 輪番に当たった人だけを候補者とする
- 輪番対象外の人の立候補を禁止する
したがって、少なくとも「管理規約そのものに輪番制が規定されている」という理解は正確ではありません。
一方、2025年9月27日の第38期通常総会議事録には、
管理組合役員改選ルールに基づき、次の方々が選出、承認されました。
と記載されています[2]。
つまり、管理規約とは別に「管理組合役員改選ルール」という文書または運用基準が存在する可能性が高いのです。しかし、現状はそのルール本文や制定・承認記録までは確認できませんでした。
したがって、今の段階での適切な表現は、
輪番制は管理規約に定められているのではなく、別の「役員改選ルール」または長年の運用慣行として行われてきた可能性が高い。ただし、そのルールの正式な根拠と内容は未確認である。
となります。
「惰性でやっていた」というよりも、まずは「長年の運用ルールとして行われてきたが、その法的・規約上の位置づけが住民に明示されていない」と見るのが公平です。
2.過去には実際に「3戸で話し合って選出」していた
2011年の「理事の選任よろしくお願いします」という文書には、次のような記載があります[3]。
理事は、6Fの604、605、606から3軒でのお話し合いにより一名選出
これは、まえださんが説明された「各エレベーターフロアの3戸で話し合って1人を選ぶ」という運用と一致します。
この文書からは、少なくとも2011年当時には輪番方式が実際に運用されていたことが分かります。ただし、この文書自体は「選任のお願い」であって、総会で制定された正式な細則であるとは確認できません。
3.「居住者なら誰でも立候補できる」のではない
管理規約第33条によると、理事・監事に選任できるのは、次の人です[1]。
- 組合員、すなわち区分所有者本人
- 現に居住する区分所有者の配偶者
- 現に居住する区分所有者の成年の一親等親族
したがって、「居住者なら誰でも」という理解は正確ではありません。
例えば、次のようになります。
| 人の立場 | 規約上の役員資格 |
|---|---|
| 区分所有者本人 | あり。 規約文上、居住要件はない |
| 居住している区分所有者の配偶者 | あり |
| 居住している成年の一親等親族 | あり |
| 賃借人 | 居住しているだけでは資格なし |
| 区分所有者の友人・同居人 | 原則として資格なし |
| 所有者ではない親族 | 配偶者または成年の一親等親族で、現に居住している場合に限る |
重要なのは、規約が定めているのは「役員に選任される資格」です。「自分から申し出れば必ず候補者名簿に載せてもらえる権利」まで規定しているわけではありません。
つまり、
- 役員になる資格があること
- 自分から立候補できること
- 総会議案の候補者名簿に載ること
- 総会で実際に選任されること
は、それぞれ別の問題です。
最終的に理事・監事を選任するのは総会ですが、その前段階で候補者をどう決めるかが、現在未確認の「管理組合役員改選ルール」の役割だと考えられます。
4.2年の任期終了後に再任できるのか
これは管理規約第34条に明記されています[1]。
ただし、再任をさまたげない。
したがって、管理規約上は、2年間務めた人が再び理事・監事に選任されることは禁止されていません。確認した範囲では、通算任期や連続任期の上限も定められていません。
ただし、ここにも二つの段階があります。
- 規約上、再任する資格はある
- 実際に次期候補者として名簿に載るかは、役員改選ルールによる可能性がある
例えば、役員改選ルールに「原則として次の輪番区分から候補者を選ぶ」と書かれていれば、再任は規約上可能でも、通常の候補者選定では輪番が優先される可能性があります。
逆に、役員改選ルールに再任制限がなければ、本人の希望と総会の承認によって、再度役員になる余地があります。
5.なぜ毎年「役員改選」があるのか
規約上の任期は実質2年ですが、全役員が同じ年に一斉に交代するのではなく、おおむね半数ずつ交代する仕組みになっていると考えられます。
第38期通常総会資料にも、役員について「1年目」「2年目」という区分があります[2]。
したがって、毎年の総会で行われる「役員改選」は、通常、
- 2年目を終えて退任する人
- 新たに1年目として就任する人
- 引き続き2年目を務める人
を整理し、総会で承認する手続だと考えられます。
6.今回の「立候補」という表現との関係
今回の配布文書にある、
わずか3か月で理事と大規模修繕委員に立候補していました。
という記載を評価するには、次のどれだったのかを確認する必要があります。
- 輪番対象となった3戸の話し合いで、理事候補に選ばれた
- 輪番とは関係なく、本人が自ら立候補を申し出た
- 欠員補充として理事会が選任した
- 管理会社や既存役員などから推薦された
1であれば、「立候補した」という表現は不正確です。「輪番区分から理事候補として選出された」などと書くべきです。
2であれば、理事会は、
- 輪番対象外の立候補を認める根拠
- 立候補の受付方法
- 他の組合員にも同じ機会を周知したのか
- 過去にも同様の例があったのか
を説明する必要があります。
したがって、この「立候補」という言葉にまえださんが抱いた違和感は、十分に合理的です。
理事会に確認したいこと:
第38期通常総会議事録に記載されている「管理組合役員改選ルール」について、正式名称、全文、制定・改正年月日、決議した機関及び現在の効力をご提示ください。
あわせて、輪番区分から選出された人以外の立候補を認めているか、立候補者を総会議案の候補者名簿に登載する手続、役員任期終了後の再任者の取扱いを明らかにしてください。
今回の配布文書で「理事に立候補」とされた人物についても、輪番区分から選出されたのか、輪番外の立候補として受理されたのか、あるいは欠員補充として選任されたのかを明確にしてください。
現段階で最も重要なのは、「輪番制があるか、ないか」という二択ではなく、議事録に登場する「管理組合役員改選ルール」の原文を確認することです。これを見ないままでは、「誰でも立候補できる」「輪番者以外は立候補できない」のどちらも断定できません。
参考資料・出典
[1]「朝日センチュリーみずほ台管理規約」朝日センチュリーみずほ台管理組合、確認日:2026年8月23日
Googleドライブ資料
[2]「2024年度(第38期)通常総会議事録」朝日センチュリーみずほ台管理組合、2025年9月27日
Googleドライブ資料
[3]「理事の選任よろしくお願いします」朝日センチュリーみずほ台管理組合関係資料、2011年
Googleドライブ資料
コメント
コメントを投稿
コメントを歓迎いたします。
朝日センチュリーみずほ台の住人がより快適なマンション生活を送ることできるようにみなさんと一緒に考えてゆきたいと思います。