当マンションは、管理規約の改定と使用細則の見直しを怠ってきました
2019年の改正後、2021年・2024年・2025年の重要な変化に、いつ対応すべきだったのか
当マンションは2019年9月に管理規約を改正しています。したがって、「長年、何もしてこなかった」という評価は正確ではありません。しかし、その後、国土交通省は2021年、2024年、2025年にマンション標準管理規約を相次いで改正し、2026年4月1日には改正区分所有法が施行されました。にもかかわらず、当マンションでは、これらを受けた体系的な規約改正と使用細則の全面点検が、区分所有者に見える形では行われてきませんでした。
本稿では、現行の管理規約と使用細則、国土交通省・法務省の公表資料を時系列で照合し、本来いつ検討を始め、いつまでに何を整えるべきだったのかを整理します。
結論
最初の本格的な見直しは2021~2022年に行うべきでした。
2024年には二度目の全面点検が必要となり、2025年秋から2026年3月にかけては、改正区分所有法の施行に備えた緊急対応を進めるべきでした。
したがって、最も公平で正確な評価は、「2019年に一度改正したものの、2021年以降の重要な法制度・社会変化に対応する体系的な見直しを、約5年間行ってこなかった」というものです。
1.2019年改正には一定の意味があった
現在の管理規約は、表紙に「2019年9月29日改正」と記載されています。巻頭の改定履歴には、過去の改正を含めて53項目が列挙されています。
評価できる点
- マンション管理士など専門家の活用
- 専門委員会の設置
- 義務違反者への措置
- 反社会的勢力への対応
- シェアハウス・民泊の禁止
- 長期修繕計画・修繕履歴の管理
限界
- 過去に生じた個別課題への追加が中心
- 規約全体を最新の標準管理規約と逐条照合した形跡が見えにくい
- 使用細則の古い記述が多数残された
- 改正後の定期点検の仕組みが示されていない
国土交通省は2016年に、管理組合の担い手不足、管理費滞納、暴力団排除、災害時の意思決定などに対応するため標準管理規約を改正し、2017年には民泊を許容するか禁止するかを規約上明確にするための改正を行いました。[1][2]
当マンションの2019年版は、これらの一部を取り込んでいます。したがって、2019年当時の規約を「完全に放置されていた」と評価するのは適切ではありません。
ただし、2019年改正は「終点」ではありません
管理規約は一度改正すれば完成する文書ではありません。法律、国の標準規約、建物の高経年化、居住者構成、技術、生活様式の変化に応じて、継続的に点検する必要があります。
2.最初の重大な見直し時期は2021~2022年
2021年6月が最初の大きな転換点
国土交通省は2021年6月22日、マンション標準管理規約を改正しました。背景には、マンション管理適正化法等の改正と、新型コロナウイルス感染症の拡大を含む社会情勢の変化がありました。[3]
主な改正内容には、次の事項が含まれています。
- ITを活用した総会・理事会のルールの明確化
- 置き配を認める場合の留意事項
- 専有部分の配管と共用部分の配管を一体的に工事する際の費用負担
- 団地型については、敷地分割制度への対応
これに対し、当マンションの現行規約は、現在も通知、議決権行使、議事録、閲覧請求などを、紙、掲示、署名押印、物理的な会場開催を中心に構成しています。
適切な対応をしていたなら、2021年度に検討を開始し、遅くとも2022年の通常総会で、必要な規約改正と使用細則の見直しを行うべきでした。
ここが、2019年改正後に生じた最初の明確な見直し機会の逸失です。
3.2024年には全面点検を避けられなかった
国土交通省は2024年6月7日、建物の高経年化と居住者の高齢化という「二つの老い」などに対応するため、標準管理規約を再び改正しました。[4]
主な内容は次のとおりです。
- 組合員名簿・居住者名簿を作成し、更新する仕組み
- 所在等が判明しない区分所有者への対応
- 修繕積立金の変更予定など、管理情報の見える化
- 総会・理事会資料など管理関係図書の保管
- EV(Electric Vehicle:電気自動車)用充電設備の設置促進
- 宅配ボックス設置に必要な決議要件の明確化
- 置き配の使用細則を作る際の参考事項
当マンションは、6棟・496戸の大規模な団地型マンションで、2026年に築39年を迎えます。高経年化、居住者の高齢化、相続、空き住戸、修繕積立金、設備更新は、すでに具体的な経営課題です。この2024年改正は、当マンションにとって他人事ではありませんでした。
この時点で、少なくとも次の工程を始めるべきでした。
しかも、現行規約第32条には、マンション管理士その他の専門家へ相談・助言・援助を求められる規定があります。第53条には専門委員会を設置できる規定もあります。専門知識を補う制度は、規約の中にすでに存在していたのです。
2024年に動かなかった意味
単なる一度の見落としというより、管理規約を定期的に点検し、法律と社会の変化に合わせて保守する機能が、十分に働いていなかったと評価せざるを得ません。
また、管理会社には、法改正や標準管理規約の変更について情報を提供し、必要な規約見直しを管理組合に助言・提案する役割が期待されます。
管理会社が専門的な対応を自社だけで行えなかったとしても、その必要性を理事会に説明し、マンション管理士や弁護士等の専門家につなぐべきでした。その動きが区分所有者に見える形で示されなかったことは、管理会社の支援姿勢としても重大な不足です。
4.2025年秋以降は法改正対応の緊急期間だった
改正区分所有法を含む令和7年法律第47号は、2025年5月23日に成立し、5月30日に公布されました。区分所有法と被災区分所有法の改正部分は、2026年4月1日に施行されました。[5]
国土交通省はこれを受け、2025年10月17日に標準管理規約を改正し、「各マンションの管理規約も見直しが必要」と明確に周知しました。[6]
この改正には、次のような管理組合運営上の重要事項が含まれています。
- 総会決議の多数決要件の見直し
- 総会招集時の通知事項などの見直し
- 所在等不明区分所有者を総会決議などから除外する手続
- 国内管理人制度の活用
- 共用部分の管理に伴って必要となる専有部分の保存行為
- 修繕積立金の使途
- 所有者不明・管理不全の専有部分等に関する財産管理制度
- 共用部分等の損害賠償請求権などの代理行使
「2026年3月まで」は法定の改正期限ではありません
管理規約の改正を2026年3月31日までに完了しなければ直ちに処罰される、という制度ではありません。改正法に抵触する規約条項は、施行後、その抵触する範囲で効力を失い、改正法が優先します。
しかし、旧条文を残したままでは、理事会・住民が誤った手続を選ぶ危険があります。国土交通省も、2026年4月1日以降に規約改正総会を招集する場合は、新法の定足数・決議要件に従う必要があると注意を促しています。[7]
したがって、当マンションの望ましい実務工程は、次のようなものでした。
- 2025年5月:法律成立を受け、調査を開始
- 2025年10月:最新の団地型標準管理規約と逐条比較
- 2025年末~2026年初頭:専門家確認、改正条文案、新旧対照表の作成
- 2026年3月まで:施行後の総会運営方針を確定し、可能なら規約改正を完了
これは「法定期限」ではなく、重大な総会手続の混乱を避けるための、合理的な準備期限です。
5.何年間、見直しを怠ってきたのか
論点ごとに、本来の着手時期は異なります。
| 論点 | 本来の着手時期 | 2026年までの遅れ |
|---|---|---|
| IT化・オンライン総会 | 2021年 | 約5年 |
| 置き配・電子的な通知や議決 | 2021~2022年 | 約4~5年 |
| 名簿・所在不明所有者への対応 | 2024年 | 約2年 |
| EV充電・管理情報の見える化 | 2024年 | 約2年 |
| 改正区分所有法への対応 | 2025年5~10月 | 約半年~1年 |
| 使用細則の全面的な現代化 | 遅くとも2019~2021年 | 約5~7年 |
最も公平な表現は、2019年に一度改正したものの、2021年以降の重要な法制度・社会変化に対応する体系的な改正を、約5年間行ってこなかった、ということです。
「30年間、まったく何もしなかった」という評価ではありません。しかし、2021年以降、複数回にわたって現れた見直し機会を継続的に逃してきたことは明確です。
6.使用細則は、さらに古い生活環境を残している
管理規約本体は2019年に改正されていますが、使用細則には、次のような表現や仕組みが残っています。
- 「6Aガス」「16号ガス瞬間湯沸器」
- 「デパートその他からの配達品」
- 「ポリバケツ置場」
- 共用玄関は24時間開放
- 長期不在時に隣人や管理員へ伝えることを中心とする防犯
- 紙と対面を前提とした届出・承認
- 置き配、宅配ボックス、EV充電、電動自転車バッテリー等の規定がない
これらは、すべてが直ちに無効・違法という意味ではありません。設備に関する記述は、現物と現在の運用を確認して判断する必要があります。しかし、文書全体が、現在とは異なる時代の設備・物流・防犯・連絡手段を前提としていることは明らかです。
使用細則は、2019年の管理規約改正時に一緒に全面点検すべきでした。遅くとも、IT総会や置き配への対応が示された2021年には、見直しを始める必要がありました。
7.「見直しを怠った」という評価は妥当か
実務上の評価として、「管理規約と使用細則の定期点検・更新を怠ってきた」という表現は妥当です。
ただし、法的な善管注意義務違反、管理委託契約違反、理事個人や管理会社の法的責任を断定するには、管理委託契約書、理事会議事録、管理会社からの提案記録、専門家への照会記録などを確認する必要があります。本稿では、そこまでを断定しません。
現在、区分所有者に示されている資料からは、少なくとも次の事項を確認できません。
- 法改正と標準管理規約改正を体系的に調査した報告
- 現行規約との新旧対照表
- マンション管理士・弁護士等による確認結果
- 規約改正専門委員会の設置
- 規約改正を完了する具体的な時期と工程
- 使用細則を現代化する計画
管理規約は「建物設備」と同じです
外壁、給排水管、エレベーターを保守するように、規約も法律と社会の変化に合わせて保守しなければなりません。一度作れば終わりの文書ではありません。
8.最終評価
| 時期 | 評価 |
|---|---|
| 2019年 | 一定の努力 当時の課題の一部を規約へ取り込んだ。 |
| 2021~2022年 | 最初の重大な遅れ IT総会、置き配等への対応を見送った。 |
| 2024年 | 管理機能の不全 高経年化、名簿、所在不明、EV、情報公開への全面点検を始めなかった。 |
| 2025年秋~2026年3月 | 緊急対応の遅れ 改正区分所有法の施行準備が、区分所有者に見える形で示されなかった。 |
| 2026年4月以降 | 先送りできない段階 新法に従った総会運営と、規約・使用細則の改正工程を早急に示す必要がある。 |
当マンションは、2019年に一度は管理規約を改正しました。しかし、その後の約5年間、重要な法制度・社会変化に対応する継続的な保守を行ってきませんでした。
問題は、過去を非難することだけではありません。築39年、496戸、6棟の共同財産を今後も維持するため、法律に合った規約、現在の暮らしに合った使用細則、専門家を活用できる運営体制へ、早急に切り替える必要があります。
参考資料・出典
- 国土交通省「『マンションの管理の適正化に関する指針』及び『マンション標準管理規約』の改正について」2016年3月14日 https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000133.html
- 国土交通省「住宅宿泊事業に伴う『マンション標準管理規約』の改正について」2017年8月29日 https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000146.html
- 国土交通省「『マンション標準管理規約』の改正について~管理組合におけるITを活用した総会・理事会のルールの明確化など~」2021年6月22日 https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000202.html
- 国土交通省「『マンション標準管理規約』の改正について~所在等不明区分所有者への対策や管理情報の見える化等に向けた改正を行います~」2024年6月7日 https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000203.html
- 法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00375.html
- 国土交通省「『マンション標準管理規約』を改正します~皆様のマンションの管理規約も見直しが必要です~」2025年10月17日 https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000252.html
- 国土交通省「マンション標準管理規約」令和7年改正および管理規約改正手続の留意事項 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansionkiyaku.html
- 朝日センチュリーみずほ台管理組合「管理規約(2019年9月29日改正)」管理組合配布資料
- 朝日センチュリーみずほ台管理組合「使用細則」管理組合配布資料
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