紙おむつ申請書の「平成」から始まった、三芳町Webサイト全体点検
三芳町の「在宅ねたきり老人紙おむつ給付申請書」をダウンロードしたところ、ファイル形式はRTFで、申請日や介護認定年月日の年号が「平成」に固定されていました[1]。
「これは、まだ使ってよい申請書なのだろうか」
その小さな疑問が、今回の調査の出発点でした。
調べると、同じ制度について、令和表記に直された別の旧Word様式を配布する現行制度ページがありました[2]。二つのページでは問い合わせ担当名と内線番号も異なります。町のサイト内検索では、現行ページだけでなく、平成固定の旧ページや旧ファイルにも到達できました。
しかし、私はこの一件だけを町へ指摘して終わりにするべきではないと考えました。
一つの古い申請書が残っているなら、同じような問題が、町のWebサイトの別の場所にもあるかもしれません。そこでAIに相談し、三芳町の公開Webサイト全体を点検することにしました。
紙おむつ申請は「発端」であり、調査対象は町サイト全体
2026年8月25日、町のrobots.txt(自動巡回を避ける範囲をサイト側が示すファイル)を確認し、そこに記載された範囲には入らず、その他の公開ページを確認しました。アクセスとアクセスの間をおおむね0.45秒以上空け、同じページへの重複アクセスや、検索条件による際限のない巡回を避けるなど、町のサーバーへアクセスが集中しない方法を採りました。
棚卸しした規模は次のとおりです。
- 重複を除いたHTMLページ:3,889件
- 添付ファイルURL:11,077件
- 公開ページからたどった内部URLの404応答:105件
- RTF・旧Word(DOC)・旧Excel(XLS):計478件
- 実際にブラウザで画面を開き、表示・操作、ファイル本文、公的資料との照合まで行った代表的問題:10項目
数が多いから、すべてが問題だという意味ではありません。
例えば、古い年号を含むページには、町の歴史資料、過去の広報、議会記録など、保存する価値のあるものもあります。同じタイトルのページにも、年度別の催しや連載記事があります。
そこで、AIによる自動検出結果は「確認候補」とし、私たちが直接確認した事項とは分けました。町に伝える文書でも、推測を確認済みの事実として書かないようにしています。
見つかったのは、古いファイルだけではなかった
全体点検で見えてきたのは、次のような幅広い改善課題です。
1.新旧の申請書と連絡先が併存している
紙おむつ給付では、平成固定RTFと令和表記の旧Word様式が併存しています[1][2]。住民が検索結果から古い方を選び、誤った様式や連絡先を使う可能性があります。
必要なのは、古いページを消すだけではありません。現行の手続ページを一つに定め、旧ページを開いた人が現行ページへ自動的に移るよう設定し、検索結果から旧ファイルを外すところまで行う必要があります。
2.制度改正が関係ページ全体へ反映されていない
介護保険の届出、印鑑登録、図書館利用登録など、複数分野のページに従来の健康保険証を本人確認書類とする案内が残っていました。
厚生労働省は、従来の健康保険証の有効期限が遅くとも2025年12月1日までに終了したことを案内しています[3]。一つの担当課だけを直すのではなく、「健康保険証」「被保険者証」「本人確認書類」という語をサイト全体で検索し、関係課が一斉に確認する必要があります。
3.プライバシー説明の根拠が旧条例のまま
町のホームページ説明は、個人情報の取扱いについて旧「三芳町個人情報保護条例」を根拠としていました[4]。
現行の「三芳町個人情報の保護に関する法律施行条例」は2023年4月1日に施行され、旧条例は廃止されています[5]。法令名だけを差し替えるのではなく、保存期間、業務委託、外部フォーム、動画、アクセス解析など、実際の運用との整合も確認する必要があります。
4.検索、URL、リンクの整理が必要
公開ページからたどった内部URL候補のうち、105件が404応答でした。また、同一タイトルを持つ複数URLの候補も多数あります。
過去ページをすべて残してはいけない、という話ではありません。「現行手続」「終了した案内」「記録として保存する資料」を区分し、古いページには後継ページを示すことが大切です。
5.旧ファイル形式が多数残っている
RTF、旧Word、旧Excelを計478件検出しました。これらは、スマートフォンだけを使う住民や、対応ソフトを持たない人には利用しにくい場合があります。
重要な情報はHTMLで読めるようにする。申請は可能なものからオンライン化する。印刷が必要な場合は、アクセシブルなPDFを用意する。このような優先順位が必要です。
6.アクセシビリティと閲覧案内を更新する必要がある
町が公開しているJIS X 8341-3:2016に基づくアクセシビリティ試験は、2021年3月に40ページを対象として行われたものです[6]。一方、案内ページにはJIS 2010という古い表記が残っています[4]。
また、閲覧環境としてInternet Explorer 8・9、Safari 5が記載され、PDFの説明には「パソコン雑誌の付録CD-ROM」から閲覧ソフトを入手できる場合がある、という案内まで残っていました[4][7]。
これらは、現在のスマートフォン利用者や、読み上げ・キーボード操作を必要とする人を中心に書き直す必要があります。
7.最終内容確認日と責任課を明確にする必要がある
自動巡回では、定型的な「更新日」「最終更新日」「掲載日」を画面上で検出できたページは、重複を除いた3,889ページ中1件でした。独自の表記や画像内の記載を検出できていない可能性はあります。しかし、少なくとも全サイト共通の表示方法は確認できませんでした。
住民が知りたいのは、ファイルがサーバーへ置かれた日だけではありません。
「この内容を担当課が最後に確認したのはいつか」
「次はいつ確認するのか」
「内容に責任を持つのはどの課か」
この三点を、各ページに表示してほしいと思います。
本当の課題は「更新していないこと」ではない
三芳町のWebサイトには、新着情報が日々掲載されています。新しい制度や催しのページも作られています。
したがって、「町はWebサイトを更新していない」と批判するのは正確ではありません。
問題は、新しい情報を追加する運用に比べて、古い情報を廃止・統合し、制度改正を関係ページ全体へ反映する運用が弱いことです。
これは、個々の職員や担当課を責めても解決しません。長年、各課が必要な情報を追加してきた結果、ページと添付ファイルが大量に蓄積したのだと思います。担当者の異動もあり、法令や制度も変わります。人の記憶と注意だけで、数千ページを正確に保ち続けるのは難しいでしょう。
だからこそ、仕組みが必要です。
町へ提案する七つの改革
私は、個別修正に加えて、次の全庁的な改革を町へ提案します。
全ページ・添付ファイルの台帳を作る
URL、責任課、確認日、次回期限、現行・終了・保存記録の区分、後継ページを管理する。
制度改正時の横断点検を仕組み化する
改正された制度名や旧用語を全サイト検索し、関係課へ更新を割り当てる。
申請の入口を一本化する
旧ページを開いた人が現行ページへ自動的に移るよう設定する(技術上は「301リダイレクト」または「恒久的な転送」という)。検索結果から旧様式を外し、HTML説明、オンライン申請、印刷用PDFの順で整備する。
毎月の自動検査と四半期の内容確認を行う
404、古い形式、期限超過、重複URLを機械的に点検し、内容の正しさは担当課が確認する。
アクセシビリティを毎年確認する
トップ、防災、医療、福祉、申請、検索、問い合わせを固定対象にし、読み上げ、キーボード、拡大表示、スマートフォンで試験する。
改善状況を住民に公表する
修正件数、未対応項目、旧ファイル残数、確認期限超過ページ、オンライン完結率を定期的に示す。
AIと専門支援を使い分け、費用を抑えながら改善を続ける
ページ台帳の作成、古い用語・リンク切れの候補抽出、修正文案、定型的なHTML整形などは、職員がAIや自動検査を活用して進める。一方、検索基盤、個人情報を扱うシステム、認証、セキュリティ、サイト全体へ影響するURL変更、高度なアクセシビリティ評価は専門家へ依頼する。まず20~50ページ程度で試行し、品質、職員の作業時間、手戻り、委託費を含む総費用を比較する。
これは、すべてを町職員だけで行うという意味でも、外部会社へ全面的に任せるという意味でもありません。外部へ依頼する場合も、手順書、ページ台帳、ひな型、検査方法、職員研修を成果物に含め、次回から町(庁)内で続けられる知識を残すことが重要です。AIが作った内容は、そのまま公開せず、担当課が制度・法令・連絡先を確認して最終決定します。
76歳の住民とAIで、ここまでできた
私はデジタル好きではありますが、自治体Webサイトの専門監査会社ではありません。76歳の一住民です。
今回、私が行ったのは、違和感を見逃さず、「紙おむつ申請だけの問題なのか。サイト全体を見てほしい」とAIに目的を伝えることでした。
AIは、公開ページの巡回方法を作り、ページと添付ファイルを棚卸しし、候補を分類し、重要な問題を公的資料と照合し、提案書と一覧表を作りました。私は、調査の目的を決め、途中の判断を確認し、どのような言葉で町へ伝えるべきかを考えました。
これは、AIが人間に代わって町を評価した、という話ではありません。
住民が感じた小さな疑問を、AIの力で「全体像」「根拠」「改善案」へ育てることができた、という話です。
他の自治体にも同じ課題はあるのか
私は今回、他の自治体サイトを同じ方法で巡回していません。したがって、「どの自治体にも三芳町と同じ問題がある」と事実のように断定することはできません。
ただし、行政サイトには、長期運用、部署ごとの掲載、法改正、担当者異動、PDFや旧様式の蓄積という共通条件があります。そのため、程度の差はあっても、同種の課題が他の自治体にも存在する可能性は高い、と私は推定しています。
今後、同じ基準で複数自治体を比較すれば、三芳町だけの問題なのか、自治体Webサイトに共通する構造的課題なのかを、より確かに示せるでしょう。
町を責めるのではなく、前進に役立てたい
今回の調査は、正式な監査ではありません。公開情報に基づく住民からの点検と提案です。添付ファイル11,077件についても、町サーバーへの負荷を避けるため全件を開いて本文確認したわけではありません。自動検出した候補には、町側での確認が必要です。
それでも、平成固定の申請書、異なる連絡先、旧制度説明、廃止済み条例、古い閲覧案内など、直接確認できた事項があります。これらは早く直していただきたいと思います。
同時に、修正を一回で終わらせず、古い情報を確実に見つけ、正しい現行情報へつなぐ仕組みへ発展させてほしいと思います。
町のWebサイトは、「デジタル上の役場窓口」です。
今回の調査資料を町へ届け、どのように改善されるかも継続して記録していきます。住民からの指摘を、町の信頼を損なう材料ではなく、行政サービスを一歩前へ進める材料として活用してもらえたらと願っています。
参考資料・出典
[1]三芳町在宅ねたきり老人紙おむつ給付申請書 三芳町、確認日:2026年8月25日
[2]在宅ねたきり老人紙おむつ給付事業 三芳町、確認日:2026年8月25日
[3]マイナンバーカードの健康保険証利用について 厚生労働省、確認日:2026年8月25日
[4]三芳町ホームページ 三芳町、確認日:2026年8月25日
[5]三芳町個人情報の保護に関する法律施行条例 三芳町、令和5年条例第2号、確認日:2026年8月25日
[6]JIS X 8341-3:2016附属書JBに基づく試験結果表示 三芳町、表明日:2021年4月1日、確認日:2026年8月25日
[7]PDFファイルの使い方 三芳町、確認日:2026年8月25日
コメント
コメントを投稿
コメントを歓迎いたします。
朝日センチュリーみずほ台の住人がより快適なマンション生活を送ることできるようにみなさんと一緒に考えてゆきたいと思います。