全庁・全職員で活用し、住民サービスと安全性を高めるための提案
前田利人|2026年10月27日
三芳町には、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を、全庁の全職員が日常の仕事で活用できる環境を、早急に整えていただきたい。私はいま、その必要性を強く感じています。

きっかけの一つは、先ごろのPHP(ピーエイチピー。ウェブサービスを動かすプログラミング言語)の脆弱性、つまり安全上の弱点をめぐる問題です。町は安全性確保のため「わが街ポータルみよし」と「地理情報システム」を一時停止し、現在の公式案内では再開したとしています。住民を守るためにサービスを止める判断が必要な場合は、その対応を評価したいと思います。なお、この案内から町での不正侵入や情報漏えいが確認されたと受け取ることはできません。[1]
同時に、この出来事を、日常の仕事の進め方を見直す機会にしてほしいのです。危険を早く知り、影響するサービスを確かめ、担当者や保守事業者に確認し、住民に分かりやすく伝える。その一連の仕事にも、AIの助けを取り入れる余地があります。
そして、AIの活用をセキュリティ担当部署だけに限る理由はありません。案内文の確認、資料の比較、調査の整理、住民への説明、事業の改善案づくり。日常業務の質を高めるために、各部署で取り組めることがあります。全職員に活用の機会を開き、成果を確かめながら、仕事として定着させてほしい。これが本稿の提案です。
1 町の取組を、日常の仕事につなげたい
三芳町がAIに何も取り組んでいない、と申し上げたいわけではありません。町の「令和7年度 新規事業一覧」には、財政デジタル推進課の「DXの推進」として、町が保有するデータを活用する生成AIツールの導入と、職員向けDX研修が掲げられています。生成AIとは、指示や資料をもとに文章などを作るAIです。[2]
ここで確認できるのは、事業資料に位置付けられた導入・研修の内容です。現在どこまで実施され、何人がどの業務で使い、どのような成果を上げているかは、この資料だけでは分かりません。既に進んでいる取組があれば、それを土台に、全職員の日常業務へ広げていただきたいと考えます。
全庁的な活用には先例もあります。横須賀市は2023年4月に活用実証を始め、同年6月には、本格実装と職員のスキル向上を進める方針を公表しました。結果報告は、効率向上の実感とともに、質問の仕方や利用方法の課題も示しています。これは当時の報告であり、その数字を現在のAIや三芳町にそのまま当てはめることはできません。ただ、使いながら学び、組織として改善する進め方は参考になります。[3]
デジタル庁も2026年6月に、生成AIの調達・利活用に関するガイドライン第2.0版を公表しています。そこでは、利活用の促進とリスク管理を一体として進める考え方が示されています。これは政府機関向けのルールであり、三芳町に同じ義務がそのまま課されるという意味ではありませんが、町が体制を考える際の参考になります。[4]
2 全職員が、自分の仕事を題材に学べる環境を
私が期待する「全職員の日常的な活用」とは、職員一人ひとりが、自分の仕事をより良くするために、必要な場面でAIに相談し、下案や点検結果を受け取り、確かめて使える状態です。職種や業務に応じた使い方を考え、町として支えてほしいのです。
例えば、広報担当なら案内文の分かりやすさを、福祉担当なら公開済みの制度説明の抜けや分かりにくさを、総務担当なら公開資料をもとに研修案や手順書を検討する。政策を考える部署なら、複数の案を比較し、住民にとっての利点や不利益、見落としている論点を洗い出す。こうした仕事から始められます。以下の具体例は、町の実施状況を示すものではなく、導入を検討していただくための提案です。
職員が改善方法を最初からすべて知っている必要はありません。「この案内を、高齢の方や初めて手続きする方にも伝わるようにしたい。何を見直すべきか」と相談するところから、気付きを得ることができます。AIの提案には不適切なものもありますが、それを確かめる過程も、職員の学習につなげられます。
そのために、町が承認した利用環境、入力してよい情報のルール、勤務時間内の実習、困ったときの相談先を用意することが必要です。個人契約や私物の端末に頼らず、管理職自身も実務で使い、各課の良い使い方と失敗例を共有する。利用回数のノルマよりも、実際の仕事がどう良くなったかを大切にしてほしいと思います。
利用するAIの選び方も大切です。安価なツールを配れば十分とは限りません。新しい高性能なモデルも候補に入れ、日本語の行政資料やPDFを扱う実務で、正確さ、使いやすさ、情報管理、費用を比較する。導入時の選択を固定せず、技術の進展に合わせて定期的に見直すことを提案します。
3 最初の共同作業に「公開案内の点検」を
具体的な始め方として、各課が公開するお知らせ本文と、添付するPDF(Portable Document Format:文書の体裁を保って配布する形式)の点検を提案します。公開予定の案内について、対象者、日時、会場、申込方法、期限、問い合わせ先を整理し、本文と添付資料の食い違いや説明の不足を確認する仕事です。
例えば、本文には「11月10日」、PDFには「11月12日」と書かれているとします。これは説明のための架空の例です。AIには「正しい日付は11月10日です」と推測させず、「本文とPDFの開催日が一致していません」と、両方の記載箇所を示させます。正しい日付は、職員が事業の決定内容に照らして確認します。
リンク先が開くか、申込画面まで進めるかの確認には、実際にアクセスできる機能と、その結果の記録が必要です。文章を読むAIに質問しただけで、リンクの動作まで確認済みと扱うことはできません。画像だけのPDFを読み取る際も、日付や数字を正しく読めたかを確かめます。
職員へ渡す結果は、次のように、そのまま確認作業に取りかかれる形にします。
- 対象ページと添付資料のリンク、確認した日時
- 食い違っている文章の引用と、それぞれの記載箇所
- 確認すべき事項と、確認できていない事項
- 事実関係が確定した後に使える修正文案
職員が根拠を確認し、必要な修正を従来の承認手順で行い、「確認中」「修正済み」「修正不要」と理由を残す。AIの通知には担当者を決め、未処理のものが放置されないようにする。最初はAIに修正・公開の権限を与えず、この受け渡しまで含めて一つの仕事にします。
読み上げへの配慮や、専門用語の説明、スマートフォンでの読みやすさについても改善案を求められます。ただし、AIの提案を採用しただけで、障害のある方を含むすべての人に使いやすくなったと判断せず、実際の画面や利用のしやすさを確かめます。
4 成果も失敗も、職員の負担まで含めて測る
導入したAIが本当に役立つかを確かめるには、「誤検知」「見逃し」「誤作動」を分けると分かりやすくなります。
誤検知:問題がないのに、問題があると知らせる
例えば、記録として残す過去の開催報告を「申込期限切れだから修正が必要」と毎回指摘する場合です。履歴を残す意味やページの目的を考慮しなければ、職員に不要な確認を増やしてしまいます。
見逃し:本当の問題に気付かない
本文とPDFの日付が違っていても、AIが見つけられない場合があります。通知がなかった資料も抜き取りで職員が点検し、既知の不備を含む資料や、問題のない資料を使って性能を確認します。「AIが問題なしとしたから正しい」という扱いにはできません。
誤作動:通知や受け渡しの仕組みがうまく働かない
同じ内容を何十回も通知する、別の課に送る、修正済みの情報をいつまでも指摘する、といった問題です。AIの文章を読む力に加え、情報の取得、担当課への振り分け、処理状況の記録まで確かめる必要があります。
評価では、実際に見つけた不備、不要な通知、見逃しに加えて、確認や手直しを含めた総作業時間、運用費用、住民にとっての分かりやすさを見ます。導入前の同じ種類の仕事と比べ、良くなった点と増えた負担の両方を記録します。
確認に時間を使っても、従来見つけられなかった重大な不備を防げるなら価値があるかもしれません。一方、AIが文章を作る速さだけで、業務全体が効率化したとは言えません。時間、品質、安全性を合わせて評価することが必要です。
5 安全に止められる仕組みを、先に用意する
最初は公開情報、または町が公開を予定し外部提供を認めた原稿の範囲で始めます。住民の申請書、相談記録、個人情報、庁内の非公開情報などを扱う業務は、利用するサービスの契約、保存・学習利用の条件、アクセス権限、記録の扱いを別途確認してから進めます。[4]
公開情報を読む仕組みでも、外部の文章に紛れ込んだ不正な指示に従って情報を送信したり、設定を変更したりしないよう、AIに与える権限を絞ることを提案します。点検対象を読む権限と、町の情報を書き換える権限は分けて設計します。
大量の誤通知が出たときには、AIの通知や連携を停止し、従来の手順へ戻せるようにします。停止できる人、原因を調べる人、再開前に確認することを、導入前に決めておくのです。将来自動修正まで任せるなら、変更前の内容を保存し、何を変えたかを記録し、元に戻せる仕組みを整えてから判断します。
ここでいう停止は、AIの不具合への対処です。実際の脆弱性や不正侵入のおそれがあるときは、住民を守るため、対象サービス自体の停止が必要な場合もあります。AIの不具合と、町のサービスに対する危険は、区別して対応する必要があります。
6 PHPの経験を、平時の備えにつなげる
セキュリティの仕事では、AIに「安全です」と判定させることより、必要な確認が抜けずに進むよう支援させることを提案します。例えば、信頼できる機関の注意喚起を整理し、町や委託先が管理するサービスの一覧と照合し、担当者や保守事業者に確認すべき事項をまとめる、といった使い方です。
不審なアクセスの分析にAIを使う場合も、適切な監視機能、専門担当者、保守事業者との連携が前提になります。一般的な対話AIを導入しただけで、町の通信を常時監視できるようになるわけではありません。記録に機密情報が含まれる可能性にも配慮が必要です。
職員や保守事業者が根拠を確認し、既存の対応手順に沿って、更新、遮断、停止、復旧などを判断する。AIだけの判断で全庁の通信を遮断させるような権限は、少なくとも初期段階では与えません。
また、ソフトウェアの更新、認証の強化、必要な権限の管理、バックアップ、委託先との連絡体制など、基本的な対策を継続することが土台です。AIはその実施を支える手段として位置付けたいと思います。情報処理推進機構のガイドラインも、組織的・段階的な対策の参考になります。ただし、中小企業向けの資料であり、町に適用される規程の代わりにはなりません。[5]
7 3か月をめどに、全庁で使い続ける判断を
全職員の利用環境と学習機会の整備を進めながら、業務へ組み込む仕組みは、対象を絞って確かめる。この二つを並行して進めることを提案します。例えば、準備開始から約3か月を目安に、次のように判断日を置きます。これは町の決定事項ではなく、具体的な工程を考えるための案です。
最初の4週間:使う基盤を整え、一つの仕事を試す
全庁の責任者と相談窓口を定め、承認済みの利用環境と情報管理ルール、職員の実習機会を整えます。並行して、1~2課で公開案内の点検を試し、開始前に評価項目と合格条件を決めます。既に環境や研修がある場合は、その改善から始めます。
2か月目:結果の良い業務を、複数課へ広げる
不要な通知を減らし、担当者への受け渡しを整え、同じ種類の業務へ展開します。利用する職員が増えても運用できるかを確かめ、各課で得られた使い方と注意点を短い手引きにまとめます。
3か月目:全庁での定着と、次に任せる仕事を判断する
品質、総作業時間、安全性、費用をもとに、全庁に広げる業務と改善を続ける業務を決めます。未達の場合も、直す点、責任者、再判定日を決める。調達などに時間が必要なら工程を明らかにし、その間にも、承認済みの環境で実施できる研修や公開情報での活用を進めます。
開始前に完璧な計画を作り切る必要はありません。ただ、誰が、いつ、何を見て次へ進むかは決めておく。「実証中」という状態が漫然と続かないようにしてほしいのです。
住民には、安全を損なわない範囲で、対象業務、改善した点、残る課題、費用、次の予定を知らせていただければと思います。それが、AI導入への理解と信頼にもつながると考えます。
8 AIを使うことで、人が引き受ける責任を深めたい
私が期待する変化は、作業時間の短縮にとどまりません。職員がAIとのやり取りから学び、自分の仕事を問い直し、これまで気付かなかった改善を試せるようになることです。
住民に何が必要か。どの不利益を防ぐべきか。複数の案から何を選び、なぜその判断をしたと説明するか。AIが提案や比較を手伝える範囲が広がっても、行政として判断し、住民に説明し、結果を引き受ける責任は町にあります。
「AIにできる仕事かどうか」という線引きだけで、人の役割を考え続けるのは十分ではありません。AIにもできるかどうかにかかわらず、人間が引き受けるべき判断と責任は何か。その問いを持ちながら、AIを使いこなす力と、行政の判断の質をともに高めてほしいと思います。
そのためには、職員が学ぶ時間と、安心して改善を試せる環境が必要です。担当者の個人的な努力だけに依存させず、町の方針として支えていただきたい。
三芳町の全職員が、AIを日常の仕事の中で使い、成果と限界を確かめ、住民のためにより良い判断をする。私は、その方向へ早急に歩みを進めていただくことを願っています。
本稿は、町の取組を応援する住民からの提案です。関係部署の皆様にご参照いただき、既に進んでいる取組の充実や、今後の検討の一助となれば幸いです。また、他の自治体や企業、関心を持つ方々にも、それぞれの職場で考える材料として読んでいただければと思います。
執筆について:本稿は、筆者とAIとの対話をもとに、公開資料を参照して作成した提案記事です。町の内部運用を調査・監査したものではありません。公表資料で確認できる事実と、筆者の提案・評価を分けて記述しています。
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参考資料・出典
確認日:2026年10月27日。ウェブページの内容は、その後更新される場合があります。
[1]「【サービス再開】Webサービスの一時停止について」/三芳町/一時停止の理由、対象サービス及び再開の案内。
https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/news/2026-1022-1446-3.html
[2]「令和7年度 新規事業一覧」1ページ「DXの推進」/三芳町/生成AI導入と職員向けDX研修の事業上の位置付け。導入済みの実績を証明する資料としては扱っていない。
https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/town/keikaku/documents/shinkiR7.pdf
[3]「ChatGPTの全庁的な活用実証の結果報告と今後の展開(市長記者会見)」2023年6月5日/横須賀市/当時の実証結果、本格実装及び職員研修等の方針。
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/0835/nagekomi/20230605_chatgpt2.html
[4]「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(第2.0版)」2026年6月12日/デジタル庁・デジタル社会推進会議幹事会/利活用促進とリスク管理、調達・運用・利活用時の考え方。以下の公表ページから本文を参照できる。
https://www.digital.go.jp/news/decb64eb-f26e-41cb-8d37-f3dd173108b8
[5]「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版、2026年9月30日更新/独立行政法人情報処理推進機構/組織的・段階的なセキュリティ対策の参考資料。
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