三芳町の自動音声による電話案内を、音声で質問し、聞き直しながら理解できる仕組みへ育ててはどうでしょうか。このような提案書を町へ郵送しました。この記事では、その内容をブログ向けに整理して紹介します。
提案のきっかけは電話案内ですが、私が町に期待していることは、もう少し広いものです。行政の隅々で「ここにAIを役立てられないか」と意識し、実際に試し、使いこなす経験を積んでほしい。その具体的な一歩として、今回の提案を考えました。
電話で分かる。あとで読み返せる。職員に相談を引き継げる。
現在の便利な機能を生かしながら、住民が必要な答えにたどり着ける案内へ育てることです。
現在の電話案内は、有用な取組です
三芳町は2026年9月1日から、マイナンバー、各種証明書、引っ越し、国民健康保険に関する自動音声案内を開始しています。24時間利用でき、案内に従って番号を選ぶと、該当するホームページや電子申請のURLがSMSで届きます。固定電話への音声案内や、業務時間内の職員への取り次ぎも用意されています。[1]
必要なページを探す手間が減り、時間外にも情報を得られる。これは住民の利便性向上に役立つ、有用な取組だと受け止めています。その土台を生かして、音声による対話を加えることを提案しました。
私が特に有用だと思うのは、ページを送られても、どこを読めばよいか分からない人を助けられる点です。電話したその場で説明を受け、分からないところを聞き直せれば、Web操作に不慣れな方や、固定電話を使う方にも情報を届けられます。
こんな会話ができる電話案内に
住民「引っ越したのですが、何をすればいいですか」
AI「三芳町の中でのお引っ越しですか。それとも、ほかの市町村からですか」
住民「ほかの市からです。ホームページを読むのが苦手なので、電話で教えてください」
AI「では、町の案内に沿って、手続きする場所と必要なものを順番に説明します」
途中で「もう一度」「もっとゆっくり」「妻が代わりに行く場合は?」と、自分の言葉で質問できます。一度に説明を詰め込まず、短い確認を挟みながら進める。条件に対応する公式情報を確認できなければ、職員へ引き継ぐ。そうした仕組みを考えています。
※この会話は提案する利用イメージです。現在の町のサービスが、この対話に対応しているという意味ではありません。
通話が終わったあとにも、案内を残す
スマートフォンには、URLと会話の記録を
現在のURL送信機能はそのまま生かします。そのうえで、希望者には通話終了後、SMSで会話記録の閲覧リンクを送る。リンクを開くと、会話履歴のテキストと、必要書類・次にすること・担当窓口をまとめた要点を読めるようにします。
長い会話をSMS本文に詰め込むのではなく、読みやすい画面で見返せる形です。自動文字起こしには聞き違いがあり得ることを示し、訂正を申し出られるようにします。
電話番号だけでスマートフォンかどうか、SMSを受信できるかを確実に判断することはできません。受け取り方法と送信先を本人に確認し、相談内容に応じた本人確認や閲覧期限を設けます。共有端末の通知画面に相談内容が直接表示されない配慮も必要です。
固定電話の方には、必要に応じてFAXや郵送を
まず電話だけで理解できる説明を基本とし、希望者には要点を紙でも届けます。自宅でFAXを受信できる方には、送信先と受信意思を確認してFAX送信する。その場合、通常は郵送を重ねる必要はありません。FAXのない方には、希望する送付先への郵送を選べるようにします。
本人が希望し、利用できる場所や個人情報の保護を確認できる場合には、外部のFAX受取サービスや窓口での印刷・受取支援も選択肢になります。ただし、自宅にFAXがない人へ、一律に外部サービスの利用を求める仕組みにはしたくありません。
最初から発送まで自動化する必要はありません。初期段階では、AIが要点の案を作り、職員が内容と宛先を確認して郵送する運用が現実的だと思います。
職員への相談で、最初から説明し直さなくてよい仕組み
会話の途中でも、本人が希望すれば職員につながるようにします。時間外や混雑時には、担当窓口の電話番号、受付番号、次の開庁日と受付時間を音声で伝えます。必要なら繰り返し、SMSを受信できる方には同じ情報を送ります。
次の開庁日以降に電話して受付番号を伝えると、職員が相談の要点、既に案内した内容、未解決の質問を確認できる。住民が同じ説明を繰り返す負担を減らし、相談の続きから始められることに、大きな意味があると考えます。受付番号を忘れた場合の対応も必要です。
なお、受付番号は記録を探すための番号です。それだけで本人確認を済ませず、個別の相談内容の開示や手続きには必要な確認を行います。
小さく試し、直しながら育てる
最初から全業務・全機能を完成させるのではなく、試作と確認、修正を繰り返すことが重要です。まずは証明書の取得方法、窓口の場所、受付時間、一般的な必要書類など、公開情報による案内に対象を絞ります。
- 第1段階:限定した分野の音声案内とURL送信を試す。
- 第2段階:会話履歴、受付番号、職員への引き継ぎを整える。
- 第3段階:安全性を確認しながら、FAX連携や郵送支援へ広げる。
まず職員が試し、次に協力する住民の少人数の試行へ進む。高齢者、ゆっくり話す方、周囲に雑音がある場面も含め、必要な答えを得られたか、誤案内がないか、職員への切り替えが容易かを確かめます。職員の負担と総費用も確認し、次へ進む条件と、見直す条件を決めます。
回答の根拠は担当課が確認した案内や「よくある質問」とし、更新する担当と手順を決めます。裏付けのない内容を推測で補わない設計と検証が必要です。個人の保険料、資格、給付の可否などの確定判断は職員が担い、住民情報システムへの接続や申請の自動実行は初期試作から外します。
通話の冒頭でAI対応であることを伝え、録音・文字起こしの目的、保存期間、閲覧できる職員、削除方法、委託先での扱いを定めます。会話履歴とAIの要約を区別し、引き継ぐ要点は可能な範囲で本人にも確認します。FAX・郵送は宛先を確かめ、必要最小限の内容にします。
一般案内に不要な個人番号や暗証番号を求めず、機密性の高い内容を公開リンクやSMS本文に載せない。AIを希望しない方や音声対話が難しい方には、従来の番号選択、Web、職員への相談を残す。こうした配慮も、使える仕組みの一部です。
技術は既にある。費用は範囲を決めて確かめる
OpenAIのGPT-LiveやRealtime APIなどは、音声で質問を受け、情報を調べて答える仕組みを構築するための候補です。APIは、外部のシステムからAIを利用するための接続口を意味します。公式資料には電話との接続や通話転送の方法も示されています。住民は通常の電話で利用できる構成とし、ChatGPTの契約やアプリを求めない仕組みを考えています。[2][3]
会話記録の閲覧画面、受付番号、SMS・FAX・郵送には、別途サービスの連携や運用の設計が必要です。それでも、公開情報の一般案内に絞った試作は、既存技術を組み合わせて着手でき、現場で試す価値が十分にあると考えています。限定した試作の技術的難易度は比較的高くないと考えますが、本番では電話設備との接続、正確性、個人情報、障害時の対応を確認する必要があります。
提案書では、例えば20万円程度を限定した初期試作の目標予算の候補とし、その範囲で何ができるか、事業者に見積もりを求める考えを示しました。これは確認済みの相場でも、完成版の上限額でもありません。
AI自体の利用料を抑えて小規模な検証を始められる余地はありますが、町で使い続けるための総費用は別に考える必要があります。初期設定・開発、電話回線、AIの利用、SMS、記録保存、FAX・郵送、保守、職員の確認・更新作業を分けて見積もるべきです。提案書に挙げた個別サービスの料金例は変わり得るため、本記事では金額の紹介より、この区別を重視しました。
現在の受託事業者による機能追加、既存のAI電話サービス、独自の小規模な構築を比較し、対象分野・人数・期間を絞って始める。特定の製品を採用することよりも、町に合う方法を確かめることが大切です。
電話案内を入り口に、行政の隅々へ
私が本当に望んでいるのは、一つ便利なシステムが増えることに加えて、町の仕事の進め方そのものに、AIの活用を考え、試し、改善する習慣が根付くことです。
住民への案内、文書の作成、必要な資料の検索、分かりやすい説明への書き換え、部署間の引き継ぎ、点検や確認。日々の仕事のそれぞれで「AIを使えば、住民にも職員にも、もっとよい方法があるのではないか」と考える余地があります。
「行政の隅々まで」と私がいうのは、あらゆる判断を直ちにAIへ任せるという意味ではありません。どの部署のどの仕事も、活用の可能性を検討する視野に入れること。そして、適した小さな仕事から実際に試すこと。使わない方がよい場面を見極めることも、その経験から学ぶべきことです。
AIの進展は速く、将来の能力や費用を正確に見通すことは困難です。完成された仕組みを待つだけでは、何を任せられるか、どこで誤るか、事業者に何を求めるべきかを、町自身が判断する経験を得にくくなります。私は、実際に使う経験を積むことが、今とりわけ重要だと確信しています。
担当職員が試した結果や困った点を部署を越えて共有し、管理職もそれを理解して、次の試行につなげる。成功した例だけでなく、うまくいかなかった理由も町の経験として残す。そうした意識と行動を続けることが、AIを使いこなす町役場を育てるのだと思います。
今回の電話案内は、住民の反応と職員の負担を具体的に確かめながら、AIの有用性と限界の両方を学べる題材です。現在の取組を土台に、小さな試作と検証を始めていただきたいと考えています。
町には、提案の受領と担当部署、試行の可否、可能であれば対象分野と進め方、難しければ主な理由について回答をお願いしました。あわせて、私自身が負担を感じている意見提出の仕組みについても、入力項目、添付方法、受付確認、提出内容を手元に残す方法の改善を求めています。
日々の小さな不便を、AIを使って改善してみる。その経験を町全体で重ねていく。今回の提案が、その一歩につながることを願っています。
参考資料・出典
町へ郵送した2026年9月23日付の提案書をもとに、ブログ向けに構成・表現を整え、提案の背景にある考えを補いました。個人の住所・連絡先は掲載していません。以下の公式資料の確認日は2026年9月23日です。製品の仕様・利用条件・料金は導入時に再確認が必要です。
- 三芳町「住民課への電話でのお問い合わせに自動音声案内を開始します」(2026年9月1日開始の案内)。
- OpenAI「Voice agents」(音声対話システムの構成に関する公式資料)。
- OpenAI「Telephony and SIP」(電話接続・通話転送に関する公式資料)。
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