── 三芳町のWebページを「点検できる町」へ
事業者の連絡先を一つの台帳にまとめ、ページ公開前にAIと機械で照合する。その具体的な進め方を描きます。
町の補助金ページに載っている販売店の電話番号が、町の別の資料と一桁だけ食い違っていました。見つけたのは私ではなく、町の新着情報を毎日見回らせているAIです。
この記事は、その小さな発見を入口にして、役場が具体的に何を、どの順番でやれば、同じ種類の誤りを仕組みで防げるかを描く提言です。あわせて、町がすでに導入している生成AI「exaBase 生成AI for 自治体」で同じ点検ができるのか、という問いにも答えます。
1AIが見つけた「一桁の違い」
私は9月24日から、三芳町ホームページの新着情報をAIに1日2回見回らせ、暮らしに関わる変化があればメールで知らせてもらっています。翌25日、そのAIが「三芳町省エネ家電買換促進補助金」のページについて、次のような報告をしてきました。
| 町が公開している資料 | 株式会社エコショップ・ドイ(藤久保27-8)の電話 |
|---|---|
| 省エネ家電買換促進補助金ページ(販売店一覧)[1] | 048-258-1194 |
| 小規模工事登録業者名簿R6.7(令和6年4月15日時点)[2] | 049-258-1194 |
| 家庭ごみ分別マニュアル(令和5年度版)[3] | 258-1194(市外局番の記載なし) |
2026年9月26日に各資料の現物で確認。最新のごみ分別マニュアル(令和7年3月版)では同店の記載を確認できませんでした[4]。
三芳町の固定電話の市外局番は通常「049」です。「048」は県内の別の地域で使われている市外局番で、補助金ページの番号は誤記の可能性が高いと私は推定しています。ただし、事業者側で番号が変わった可能性も否定できず、どちらが正しいかは確認できていません。そこで9月25日夜、町の「環境課へのお問い合わせ」フォームから、正しい番号の確認と、必要なら訂正をお願いしました。
補助金の予算は950万円、9月19日時点で残額も950万円。受付は先着順で、これから多くの町民が販売店に相談の電話をかけるはずです[1]。誤った番号に電話をかけた人は、つながらないか、見知らぬ相手につながります。小さな誤りでも、町民と町内の商店の両方に実害が出うる場所でした。
念のため書いておくと、これは担当の方を責める話ではありません。人は必ず打ち間違えます。問題は、打ち間違いが公開前に止まる仕組みがないことです。以下は、その仕組みについての提言です。
2提言 ── 事業者連絡先の「一元管理」と「自動照合」
フォームで町にお送りした提言のうち、この記事で最も伝えたいのは次の部分です。
- 町内事業者の連絡先を一つの台帳(マスター)で管理する。各ページは台帳の情報を使い、ページごとに手で打ち直さない。
- Webページを公開する前に、台帳と自動で照合する。名称・所在地・電話番号が台帳と食い違えば、公開前に知らせる。
- 三芳町内の事業者なのに市外局番が「049」でない場合は、確認表示を出す。誤りと決めつけず、担当者に一度確かめてもらう。
- まず補助金・ごみ・登録業者名簿の3種類で試し、効果を数字で測ってから広げる。
2-1 なぜ食い違いが起きるのか
町のホームページでは、同じ事業者の情報が、課ごと・資料ごとに別々に入力されていると考えられます。補助金ページは環境課の事業、登録業者名簿は入札・契約の関係ページに載る資料、ごみ分別マニュアルはまた別の時期に作られた冊子です。同じ情報のコピーが3つあれば、ずれる機会も3つあります。どれか一つが変わっても、ほかは古いまま残ります。
図1 「コピーが増えるほど、ずれる」から「正本は一つ」へ
2-2 役場が用意するもの ── 3つの仕組み
① 事業者連絡先台帳
町内事業者の名称・所在地・電話などを1行1事業者で管理する表。最初はExcelやスプレッドシートで十分です。既存ページからの転記作業はAIに任せられます。
② 公開前の自動照合
ページに事業者名が出てきたら、台帳と突き合わせ、電話や住所が違えば「台帳と不一致」と知らせます。
③ 市外局番チェック
町内所在地なのに049以外の固定電話なら「要確認」と表示。止めるのではなく、一度立ち止まらせる仕掛けです。
台帳に持たせる項目は、たとえば次のとおりです。ポイントは「いつ、何で確認したか」を必ず残すことです。今回のように資料どうしが食い違ったとき、どれが新しい情報かを判断できるからです。
| 項目 | 例 | ねらい |
|---|---|---|
| 事業者ID | J-0123 | 名称の表記ゆれ(「エコショップ・ドイ」「エコショップ ドイ」)があっても同一と分かる |
| 正式名称・所在地 | 株式会社エコショップ・ドイ/藤久保27-8 | 照合の基準 |
| 電話・FAX | 049-258-1194(※確認中) | 各ページはここを参照 |
| 最終確認日・確認方法 | (記入例)○年○月○日 事業者へ電話で確認 | 情報の鮮度を判断する |
| 掲載しているページ | 補助金ページ、登録業者名簿、ごみ分別マニュアル | 変更時に直すべきページが一覧で分かる |
| 台帳の担当課 | (町で決める) | 更新の責任をはっきりさせる |
市外局番チェックの判定は、次のような簡単なルールで足ります。
| 番号の形 | 判定 | 対応 |
|---|---|---|
| 049-2xx-xxxx など町内で一般的な形 | 通過 | そのまま公開 |
| 0120・0800(フリーダイヤル)、050(IP電話)、携帯番号 | 注意 | 正しい使い方もあるので、台帳と一致していれば通過 |
| 町内所在地なのに048・04など別地域の固定電話 | 要確認 | 担当者が事業者か台帳で確かめてから公開 |
| 市外局番なし(258-1194など) | 注意 | 市外から見る人もいるので049を補う |
| 台帳にない事業者 | 注意 | 公開と同時に台帳へ登録 |
2-3 公開前の点検の流れ
図2 公開前点検の流れ(②③は機械とAIが受け持ち、判断は職員が行う)
役割の分け方がこの提言の要です。見つけるのは機械とAI、確かめて決めるのは人。職員の方に「もっと注意深く」と求めるのではなく、注意が自然に向く場面を仕組みで作ります。
2-4 AIか、仕組みか ── 答えは「両方」
「電話番号の形式チェックなら、AIを使わなくても簡単なプログラムでできる」という意見があるでしょう。その通りです。局番チェックのような決まったルールは、プログラムの方が安く、確実です。
ただ、今回の発見は、形式のチェックだけでは生まれませんでした。補助金ページ・登録業者名簿(PDF)・ごみ分別マニュアル(PDF)という形式も時期も違う3つの資料をまたいで、「同じ事業者だ」と見抜いて突き合わせたのはAIです。表記ゆれを吸収し、PDFを読み、食い違いを見つける。ここはAIが得意とするところです。
| 作業 | 向いている担い手 |
|---|---|
| 既存ページやPDFから事業者情報を拾い、台帳の下書きを作る | AI |
| 資料どうしの食い違いを見つける(表記ゆれを含む) | AI |
| 局番チェック、台帳との完全一致チェック | プログラム(ルール) |
| 修正後の文案・HTMLを作る | AI |
| どちらが正しいか確かめ、公開を判断する | 職員 |
ページの修正そのものも、いまは「ここをこう直して、修正後の文面を出して」とAIに頼めば済みます。職員がHTMLの編集画面と格闘する時代は終わりつつあります。人の仕事は、確認と判断に集中させればよいのです。
2-5 まず3種類で試し、数字で測る
いきなり全ページに広げる必要はありません。今回の食い違いが見つかった補助金・ごみ・登録業者名簿の3種類で始めるのが現実的です。そして、効果を次の数字で測ります。
| 指標 | 測り方 | 意味 |
|---|---|---|
| 不一致件数 | 試行開始時の点検で見つかった件数 → その後の月ごとの新規件数 | 仕組みが誤りを減らしているか |
| 訂正までの日数 | 発見から公開ページの修正まで | 見つけた誤りが素早く直るか |
| 町民からの問い合わせ件数 | 「番号がつながらない」などの連絡 | 町民への実害が減ったか |
| AI点検の実施率 | 公開・更新したページのうち、公開前点検を通した割合 | 点検が日常業務に根づいたか |
2-6 職員の方が今日から使える指示文
町が導入済みの生成AIに、そのまま貼り付けて使える指示文(プロンプト)の例です。点検したいページをPDFなどで保存し、名簿のPDFと一緒に読み込ませてから入力します。
点検用プロンプト例同じ指示文で、修正後の文面を作らせることもできます。最後に人が確かめる前提です。
3町のexaBaseでは、同じ点検ができないのか
三芳町は2025年7月、行政向け生成AI「exaBase 生成AI for 自治体運用パッケージ」を導入しました。行政専用ネットワーク(LGWAN:Local Government Wide Area Network)で使え、アカウント数は無制限、職員研修やプロンプトの整備も含まれています[6]。では、このAIで今回のような点検はできるのでしょうか。事実と推定を分けて整理します。
| 論点 | 整理 |
|---|---|
| 資料を読めるか | 事実Word・Excel・PDF・PowerPointなどを読み込め、アップロード数の制限もないと製品ページに明記されています[5]。 |
| 庁内資料を参照して答えられるか | 事実庁内の文書を参照して答える機能(RAG:Retrieval-Augmented Generation=検索拡張生成)があります[5]。町も令和7年度の事業一覧で「三芳町が保有するデータを活用し、オリジナルの回答を生成するAIツールを導入します」と掲げています[7]。 |
| 高性能なAIモデルを使えるか | 事実ChatGPT・Gemini・Claudeの各系統のモデルを同じ環境で使えるとされています[5]。 |
| インターネット上の町ホームページを直接読めるか | 推定製品にはWeb検索の機能もありますが[5]、LGWAN側の端末からインターネット上のページを直接読めるかは、町の設定やネットワークの分け方によります。公開情報からは分かりません。 |
| 結論 | 私の評価ページや名簿をファイルで保存して読み込ませれば、今回と同じ照合はexaBaseで十分にできると考えます。道具はすでに町の手の中にあります。 |
つまり、足りないのは道具ではなく、「公開前にAIで点検する」という手順が、仕事の流れの中に書き込まれていないことです。私が7月の記事で書いた「AIの導入」と「AIの活用」の溝は、ここにもあります。
41年後の三芳町へ ── 道筋の案
今回のような誤り、あるいは誤りかもしれない箇所は、最先端のAIを使えば容易に見つけ、直すことができます。それを一部の職員の工夫で終わらせず、全職員が毎日の仕事でAIを使う町へ。1年でたどり着ける道筋を、私なりに描いてみます。
- 〜2026年12月試行を始める
- 補助金・ごみ・登録業者名簿の3種類をexaBaseで点検し、不一致件数を記録する
- 点検結果から、事業者連絡先台帳の第1版をAIに下書きさせ、担当課が確認する
- 〜2027年3月手順に組み込む
- ページ公開・更新の依頼書に「AI点検済み」の確認欄を設ける
- 局番チェックなどの決まったルールを照合手順に加える
- 全職員向けに、点検用プロンプトの使い方を短時間で共有する
- 〜2027年6月対象を広げる
- 事業者情報が載るほかのページ(入札・福祉・子育ての事業所一覧など)へ拡大する
- 修正は「AIが文案を作り、職員が確認して反映する」を標準にする
- 〜2027年9月見える化する
- 全ページを定期的にAIで巡回点検し、結果を月ごとに記録する
- 不一致件数・訂正日数などの成果を広報みよし等で公表する
上の時期と内容は、私の提案です。町の計画ではありません。実際の進め方や所管の分担は町が決めることで、組織の現状を私が把握しているわけではありません。
5むすび ── 小さな一件を、大きな変化の入口に
電話番号の一桁は、ささいな誤りに見えます。けれども、それを「誰かが気づいたら直す」から「仕組みで見つけ、人が確かめて直す」へ変えることは、町のデジタル運用の質を一段引き上げることにつながります。そして、その仕組みの中心にAIを据えることは、職員一人ひとりがAIを毎日使う習慣を育てる、いちばん身近な入口にもなります。
今回の問い合わせに町がどう応え、ページがいつ直るのか。そして提言した仕組みが試されるのか。これまでと同じく、記録し、見届け、動きがあれば日付を付けてこの記事に追記します。
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経緯の記録
- 2026-09-25:町サイトの定期見回りAIが、補助金ページの電話番号の不一致を報告
- 2026-09-25:町の「環境課へのお問い合わせ」フォームで、番号の確認・訂正と本提言を送付
- 2026-09-26:各資料の現物で記載を再確認し、本記事を作成
出典
- 三芳町「三芳町省エネ家電買換促進補助金」(2026年9月26日閲覧) https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/life/gomi/1001_eakon.html
- 三芳町「小規模工事登録業者名簿R6.7(令和6年4月15日時点)」 https://cms.town.saitama-miyoshi.lg.jp/work/download/documents/240415syoukibo.pdf
- 三芳町「家庭ごみの分け方・出し方 分別マニュアル」(令和5年度版) https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/life/gomi/documents/gomidashikata2023.pdf
- 三芳町「家庭ごみの分け方・出し方 分別マニュアル」(令和7年3月版) https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/life/gomi/documents/gomi_manual.pdf
- エクサウィザーズ「exaBase 生成AI for 自治体」製品ページ(2026年9月26日閲覧) https://exawizards.com/exabase/gpt/gov/
- イマクリエ「埼玉県三芳町にて『exaBase 生成AI for 自治体運用パッケージ』の提供およびLGWANでの利用を開始」(2025年7月11日) https://www.imacrea.co.jp/20250711-01/
- 三芳町「令和7年度 新規事業一覧」 https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/town/keikaku/documents/shinkir72.pdf
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