三芳町のデジタル化を、町民の目で
土台を築いてきた町が、
いよいよAIを活かす段階へ。
最近、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」と並んで、「AX(AI・トランスフォーメーション)」という言葉を耳にするようになりました。国も2026年の夏、AIを中心に据えた行政改革へ、はっきり舵を切っています。
では、私たちの三芳町はどうでしょうか。調べてみると、町は派手な看板こそ掲げていないものの、2021年から「財政デジタル推進課」を軸に、着実に土台を積み上げてきたことが見えてきました。そして9月28日には、町の中央公民館で「AI」を名前に掲げた住民向け講座が開かれます。
この記事では、AXとは何かを整理したうえで、三芳町のこれまでの歩みを記録し、町民としてこれからに期待すること、応援したいことをまとめます。
1AXとは何か ── DXとの違い
AX(AI Transformation)は、AI(人工知能)を中心に据えて、仕事の進め方や組織のあり方そのものを変えていくことを指します。DXの「次の段階」と位置づけられることが多い言葉です。
| DX(デジタル・トランスフォーメーション) | AX(AI・トランスフォーメーション) | |
|---|---|---|
| 主な技術 | クラウド、ペーパーレス、業務システム | 生成AI、AI-OCR、AIエージェントなど |
| 目指すこと | アナログからデジタルへ。業務の効率化 | 蓄えたデータをAIで活かし、判断や対応の質を高める |
| 例 | 紙の申請書をオンライン申請にする | 届いた申請をAIが読み取り、不備を下調べして職員に回す |
| 位置づけ | AXの土台づくり | DXの上に築く発展形 |
大切なのは、「AIツールを導入した=AX」ではない、という点です。私なりに段階を分けると、次の四つになります。
- ①道具をそろえる安全なAI環境を整える
- ②一人ひとりが使う職員が文書作成や要約に使いこなす
- 三芳町はいまここへ③仕事の流れに組み込む問い合わせや審査の工程にAIを位置づける
- ④サービスを設計し直す住民から見た手続きそのものを変える
※段階の分け方と、三芳町の位置づけは筆者の見立てです。
後で見るように、三芳町は①をすでに終え、②から③へ進もうとしている段階にあると、私は受け止めています。
2国も「AX」へ ── 2026年の大きな流れ
- 2026.7.21政府は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定。AIトランスフォーメーション(AX)を前面に掲げ、政府職員向けのガバメントAI「源内(げんない)」の全府省庁での実証や、自治体のAX/DX基盤の高度化を盛り込みました。[1]
- 2026.4.24「源内」の一部を、商用利用もできる無償のオープンソースとして公開。自治体が同じように安全な生成AI環境を築けるようにするためです。5月末時点で約10万人の政府職員が利用可能になっています。[2]
- 2026.6.12デジタル庁が、行政の生成AI調達・活用ガイドライン(DS-920)を第2.0版に改定。「危ないから使わない」ではなく、「リスクを管理しながら使いこなす」という考え方です。[3]
- 2025.12総務省が「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」を改定し、生成AIの記述や、職員向け利用ガイドラインのひな形を加えました。[4]
国がAXに本腰を入れたことは、三芳町のような町にとって追い風です。国のルールや無償の仕組みを、「使える部品」として取り入れられるからです。
3三芳町の歩み ── 着実な積み上げ
- 2020〜2022年度施政方針に、AI-OCR(手書き文字の読み取り)やRPA(定型作業の自動化)の活用を掲げる[5]
- 2021年4月組織変更で「財政課」が「財政デジタル推進課」に。電算統計担当を置き、財政とデジタルを一体で担う体制へ[6]
- 2024年住民課・福祉課など5課で「書かない窓口」。電子申請と町公式LINEの連携も始まる[7][8]
- 2025年7月自治体向け生成AI「exaBase 生成AI for 自治体運用パッケージ」を導入。行政専用ネットワーク(LGWAN)で使え、アカウント数は無制限、職員研修も含む[9]
- 2025年度新規事業「DXの推進」に、公会計の電子決裁、町が持つデータを活用して町独自の回答を生成するAIツールの導入、職員向けDX研修を掲げる[10]
- 2025年度住民記録や税など18業務の、国の標準に沿ったシステムへの移行(令和7年8月から運用開始予定と記載)[10]
- 2026年9月1日未来創造拠点施設「ルミナみよし」の供用開始。総合事務室や、図書館のセルフ貸出・自動返却機などを備える[11]
- 2026年9月28日中央公民館「詐欺にだまされないためのAI活用講座」(高齢者向け。ChatGPTを使った見分け方をやさしく学ぶ)[12]
こうして並べると、三芳町のデジタル化は一足飛びではなく、土台(組織・システムの標準化・安全なネットワーク)を固めてから、その上にAIを載せるという順番で進んでいることがわかります。国がいま示している「守りを固めながらAXへ進む」道筋と、同じ方向です。
4なぜ「財政」と「デジタル」が一つの課なのか
「デジタル推進が財政の課の中にあるのは、守備範囲が狭いのでは」と感じる方もいるかもしれません。私も最初はそう思いました。けれども町の規模で考えると、むしろ理にかなった設計だと考えるようになりました。(以下は公開資料をもとにした筆者の見立てです)
予算と一緒に考えられる
財政部門はすべての課の予算編成に関わります。新しい事業の検討の段階から「デジタルでどう効率化できるか」を同じ机で話し合えるのは、全庁にデジタル化を広げる大きな強みです。
標準化という大事業に向く
国が進める基幹システムの標準化は、多額の費用と、ほぼ全部署の業務の見直しを伴います。お金とシステムを一つの課が見ることで、計画がぶれにくくなります。
限られた人材を集められる
町の規模では、情報システムに詳しい職員は多くありません。一か所に集めることで、情報セキュリティから生成AIの導入まで、一貫して進められます。
実際、同課の電算統計担当は、少人数で町のシステムを管理しながらセキュリティ対策を効率化し、DXの推進に力を振り向けてきたことが、民間企業の導入事例として紹介されています。[13]
国のデジタル庁のような大きな独立組織は、町の規模では現実的ではありません。三芳町のかたちは、小さな町ならではの知恵だと受け止めています。
5「小さな町だから遅れる」は、宿命ではない
総務省の調査(2024年12月末時点)では、生成AIを導入済みの団体の割合に、規模によるはっきりした差がありました。[14]
その中で三芳町は、2025年7月に、安全な自治体向け生成AIを全庁で使える環境を整えました。小規模自治体の中では、早い段階で一歩を踏み出した側にいると言ってよいと思います。
小さな町でもAXを進められる理由は、少なくとも三つあります。
実績ある仕組みを使う
多くの自治体が使うクラウド型のパッケージを選べば、高度なセキュリティを備えた環境を、一から開発するよりずっと少ない負担で整えられます。国の「源内」の無償公開も、今後の選択肢を広げます。
官民で学ぶ
町が導入したパッケージには、職員研修、プロンプト(AIへの指示文)の整備、利用状況の定期報告まで含まれています[9]。道具だけでなく「使いこなす力」を一緒に育てる設計です。
小回りが利く
職員が数万人規模の大都市では、新しいルールを全庁に浸透させるだけで長い時間がかかります。町の規模なら、方針が決まれば行き渡るのは早い。小ささは、むしろ武器になりえます。
もちろん、壁もあります。住民の個人情報を守ること、AIがもっともらしい誤りを出す「ハルシネーション」への備え(最終的な判断は必ず人が行う)、そして人材の確保です。けれども、行政専用ネットワークで使える環境を選び、研修を組み込んだ三芳町の進め方は、こうした壁を正面から意識したものだと感じます。
6町民として、期待し、応援したいこと
AXは役場の中だけで完結するものではありません。住民とともに進めてこそ意味があります。町民の一人として、次のことを期待し、応援していきたいと思います。
「AX」を正面に掲げる日を楽しみに
課の名前を急いで変える必要はないと思います。中身が先、看板は後です。ただ、次に町の計画やDXの方針を見直す機会には、「AIをどう活かすか」を正面から掲げていただけたら、職員の皆さんの取り組みが、住民にもっと伝わるはずです。
職員の皆さんの成果を「見える化」して
導入したパッケージには、利用状況の定期報告が含まれています。「文書作成の時間がこれだけ減った」「こんな業務で役立っている」といった一端を、広報みよしなどで紹介していただければ、住民は安心し、職員の皆さんの努力も正当に評価されます。成果を示すことは、次の取り組みを後押しする力にもなります。
住民の学びの場を、次のステップへ
9月28日の「詐欺にだまされないためのAI活用講座」は、住民向けにAIを正面から扱う、うれしい一歩です。町は以前、公民館の「スマホ教室」の次のステップとして生成AIを題材にしたい、という考えを示していました。これは、私が2026年6月に生成AIの市民講座を提案した際、町から丁寧な回答としていただいたものです(その経緯はこちらの記事に記録しています)。その方向が形になり始めたことを、心強く思います。高齢者がAIを「怖いもの」ではなく「頼れる道具」として使えるようになれば、手続きの負担は、住民と役場の双方で軽くなっていきます。
住民の側も、使って、声を届ける
電子申請やLINE連携、書かない窓口は、使う人が増えてこそ磨かれます。私たち住民も、まず使ってみて、良かった点、分かりにくかった点を、責めるのではなく建設的に伝えていく。それが、町のAXをいちばん確かに前へ進める力になると考えています。
三芳町のデジタル化は、華やかな宣言ではなく、組織づくり、システムの標準化、安全なAI環境の整備という、地道な積み上げで進んできました。そしていま、その土台の上で、AIを仕事と暮らしに活かす段階に入ろうとしています。
「小さな町だから仕方がない」とは思いません。小さな町だからこそ、速く、住民に近いところでAXを実現できるはずです。私はこれからも、町の取り組みを記録し、期待をこめて見守り、応援していきます。
関連記事(本ブログ)
- Impress Watch「政府、AI活用のデジタル社会を目指す『重点計画』」(2026年7月) https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2126624.html
- デジタル庁「ガバメントAI源内の展開状況」(2026年5月) デジタル庁資料(PDF)
- デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(DS-920)」 https://www.digital.go.jp/news/decb64eb-f26e-41cb-8d37-f3dd173108b8
- 総務省「自治体におけるAIの利活用促進に向けて」(2025年12月) 総務省資料(PDF)
- 三芳町「令和4年度 施政方針」 三芳町(PDF)
- 広報みよし 2021年4月号「町の組織を変更します」 三芳町(PDF)
- 三芳町「書かない窓口」 https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/life/koseki/2024-0205-1318-20.html
- 三芳町「電子申請とLINEの連携」 https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/news/2024-0926-denshishinsei-line.html
- PR TIMES(株式会社イマクリエ)「埼玉県三芳町にて『exaBase 生成AI for 自治体運用パッケージ』の提供およびLGWANでの利用を開始」(2025年7月11日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000143.000047071.html
- 三芳町「令和7年度 新規事業一覧」 三芳町(PDF)
- 三芳町「ルミナみよし」 https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/study/shakai/luminamiyoshi.html
- 広報みよし 2026年9月号 P.17 三芳町(PDF)
- 株式会社アルプス システム インテグレーション 導入事例「三芳町」 https://www.alsi.co.jp/casestudy/miyoshimachi.html
- 総務省「自治体における生成AI導入状況」 総務省(PDF)
※本記事の評価・見立ては筆者個人のものです。事実関係は2026年9月23日時点の公開資料に基づいています。
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