管理室の窓ガラスに、この貼り紙が出てから三か月あまりが経ちました。

管理規約及び総会議事録は朝日センチュリーみずほ台管理センターに保管しております。
閲覧の際は理事長の許可が必要となります。
尚、コピー・撮影はできません。
朝日センチュリーみずほ台管理組合
管理室窓の掲示(2026年9月撮影)
私は区分所有者の一人として、この貼り紙を見るたびに恥ずかしさと怒りを覚えます。感情の話はこの一文で終えます。ここから先は、何が起き、法と規約は何を定め、当マンションの管理組合はどうあるべきかを、順を追って書きます。
何があったか
経緯は6月に本ブログで報告したとおりです[1][2][3][4]。要点だけを時系列でまとめます。
5月29日、私は理事長宛に文書で、現行の管理規約、使用細則、第37期通常総会資料の写しの交付を求めました。6月5日、回答がないため再度文書で求めました。翌6月6日、返ってきたのは私宛の文書ではなく、管理室の窓ガラスの貼り紙でした。管理員に呼び止められ、貼り紙は管理会社(朝日管理株式会社)の当マンション担当者の指示で掲示したものだと聞きました。同日、私は理事長に文書による正式な回答を求める投書を投函し、6月30日には改めて「管理規約等の写しの交付に関する先般の対応について」と題する投書を提出しました[4]。
その後、理事長からも理事会からも、文書による回答は一通も届いていません(9月16日現在)。貼り紙は今も貼られたままです。
貼り紙は誰の言葉か
貼り紙の名義は「朝日センチュリーみずほ台管理組合」です。作ったのは管理会社の担当者だと管理員は言いました。しかし名義が管理組合である以上、その内容に責任を負うのは理事長と理事会です。管理会社は委託を受けて事務を行う立場であり、区分所有者への回答の主体ではありません。
現行の管理規約第76条第2項は、こう定めています[11]。
規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、これを閲覧させなければならない。
主語は理事長です。区分所有者からの書面による請求に、管理会社の担当者が作った貼り紙で応じるという建付けは、規約のどこにもありません。
法律は何を求めているか
区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)第33条は、規約について三つのことを定めています。管理者(当マンションでは理事長)が保管すること、利害関係人から請求があれば正当な理由がある場合を除いて閲覧を拒んではならないこと、保管場所を建物内の見やすい場所に掲示することです[5]。総会議事録についても第42条第5項でこれが準用されます。閲覧を正当な理由なく拒めば、第71条により20万円以下の過料の対象になります[6]。
ここで、正確を期すために認めておくべきことがあります。法律が明文で定めているのは「閲覧」までで、写しの交付(謄写)までは定めていません。2024年10月24日の名古屋地方裁判所の判決は、議事録等の写真撮影を求めた区分所有者の請求について、謄写を認めるかどうかは各管理組合の規約と運営に委ねられている、と判断しています[7]。つまり「閲覧のみ」という運用そのものは、法の最低線には違反していません。
私はこの点を隠すつもりはありません。むしろ、だからこそ規約に書かなければならない、というのが本稿の結論です。
それでも、この貼り紙は法の最低線を下回っている
「閲覧のみ」は法に反しない。しかし貼り紙はそこで止まっていません。「閲覧の際は理事長の許可が必要となります」と書いてあります。
法律は「正当な理由がある場合を除いて閲覧を拒んではならない」と定め、当マンションの規約は「書面による請求があったときは、これを閲覧させなければならない」と定めています。どちらも、請求があれば閲覧させる義務です。貼り紙はこれを「許可」に置き換えました。義務を裁量に変える文言を、管理組合の名義で掲示しているのです。
法務省は、規約を電磁的記録で保管している場合の閲覧について、保管場所のディスプレイでの表示が法定の方法であるとしつつ、保管者と利害関係人が合意すればメール送信などによることも妨げられないと説明しています[8]。国は閲覧の負担を軽くする方向を示しています。当マンションの貼り紙は逆を向いています。
外の業者には有償で渡し、住人本人には「閲覧のみ」
もう一つ、説明のつかない非対称があります。
国土交通省のマンション標準管理委託契約書第15条は、宅地建物取引業者から売買のために管理規約等の提供を求められたとき、管理会社が管理組合に代わって写しを提供し、その費用を相手方から受領できると定めています[9]。当マンションの重要事項説明書にも、管理事務の内容として「管理に係る重要事項調査報告書の作成と提供」が挙げられています。売買や賃貸の際、不動産業者の依頼で作成され、有償で提供されるものです。
規約に拘束されて日々暮らしている区分所有者本人には「閲覧のみ、コピー・撮影不可」。外部の業者には有償で調査報告書を作って渡す。これを説明しろと言われて、理事会は答えられるでしょうか。
「現に有効な規約」が一冊にまとまっていない
私が5月に求めたのは「現に有効な管理規約」です。ここには実務上の切実な理由があります。
当マンションの規約は1987年の成立以降、別表を含めて30回以上改正されています。規約原本と、改正を決議した歴代の総会議事録を突き合わせなければ、今この瞬間に有効な条文が確定しません。「閲覧のみ」では、この突き合わせを管理室のカウンターで、メモも撮影もせずに行えということになります。
国土交通省の標準管理規約第72条は、この問題を想定しています。第3項は、規約が総会決議で変更されているときは理事長が「現に有効な規約の内容」を記載した書面を作成して保管することを求め、第4項は区分所有者等の請求があればそれを閲覧させることを求めています[10]。
9月26日の総会に諮られる第2号議案「管理規約改訂の件」の管理規約対照表を開くと、31頁の左欄にこの標準管理規約第72条第3項・第4項が載っています。その行の「現行の管理規約」欄と「管理規約改正案」欄は、どちらも空欄です。当マンションの規約にはこの規定がなく、今回の改正案でも入っていない。対照表はその空白を可視化しているのに、手当てされていません。
本稿は総会議案そのものの評価を目的とするものではありません。ここでは、対照表が空欄であるという事実だけを記します。
私の主張
管理規約はマンションの憲法です。読んでいなくても、総会に出ていなくても、賛成していなくても、全区分所有者と居住者を拘束します。拘束するルールである以上、それを知る手立てを保障するのは、ルールを預かる側の責任です[1]。
だから当マンションの管理組合は、次のような組合であるべきです。
第一に、管理規約、使用細則、過去の総会資料(議案書・議事録)は、区分所有者から請求があれば、閲覧に留めず、写しを迅速に交付する。紙でもPDFでもよい。目安は一週間以内。
第二に、実費として一部100円を徴収する。無償でなくてよい。「若干の負担のもとで、いつでも手に入る」ことが大切なのであって、無償かどうかは本質ではない。
第三に、これは理事長の職責として処理する。理事会の議題にせず、管理会社の判断にも委ねない。規約が「理事長が」と定めているとおりに。
第四に、「現に有効な規約」を一冊の書面にまとめて保管し、改正のたびに更新する。標準管理規約第72条第3項・第4項に相当する規定を、当マンションの規約第76条に加える。
私は6月30日の投書で、規約に「区分所有者からの規約写しの交付請求に対し、理事長が速やかに交付すること」および「実費として100円とする」と明記するよう求めました[4]。回答はありません。本稿でもう一度、同じことを求めます。
住人の皆さんへ
私一人が写しを求めて断られた、という話ではありません。貼り紙は管理組合の名義で、全区分所有者に向けて出ています。あなたが規約を手元に置きたいと思ったとき、同じ貼り紙があなたの前に立ちはだかります。
規約を渡さずに「規約を守れ」は、ありえません[1]。管理規約は、住人が自由に手にできるものでなければならない。それだけのことを、当マンションはまだ実現していません。
出典
[1] 規約を渡さずに『規約を守れ』はありえない──マンションの管理規約と総会資料をめぐる法律と心得(2026年6月4日)
[2] 管理規約の写し交付を求めたら、窓ガラスの貼り紙が「回答」とされた件(2026年6月6日)
[3] 管理室に私宛の貼り紙が出ました(2026年6月6日)
[4] 管理規約等の写しの交付に関する先般の対応について(2026年6月30日)
[5] 建物の区分所有等に関する法律 第33条(規約の保管及び閲覧)
[6] 同法 第71条(過料)
[7] 弁護士法人ASK川崎「マンションの管理規約や議事録を閲覧【謄写の可否が争われた裁判例も紹介】」(名古屋地裁2024年10月24日判決の紹介)
[9] 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」第15条(管理規約等の提供等)
[10] 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」第72条(規約原本等)。第39期通常総会議案書 管理規約対照表31頁に転載
[11] 朝日センチュリーみずほ台管理組合 管理規約(2019年9月29日改正)第76条第2項
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